JUNTENDO News&Events ニュース&イベント

2025.06.02 (MON)

  • 順天堂大学について
  • 研究活動
  • メディアの方へ
  • 企業・研究者の方へ
  • 医学部
  • 医学研究科

専門医と多職種によるチーム医療で、包括的にパーキンソン病のケアを行う「パーキンソン病センター」を順天堂大学医学部附属順天堂医院が開設

■概要

順天堂大学医学部附属順天堂医院(院長:山路 健)は、より多くのパーキンソン病患者さんやご家族への包括的なケアを行うべく、専門医と多職種によるチーム医療を実践する「パーキンソン病センター」(センター長:波田野 琢)を開設しましたのでお知らせします。

      

「パーキンソン病センター」について

・開設日    202541

・場所       :順天堂大学医学部附属順天堂医院 脳神経内科

・対象       :当院の外来患者・入院患者

・担当医師 :センター長 波田野 琢

■背景

パーキンソン病は、加齢や環境要因、遺伝的背景などいくつかの原因が重なることにより発症すると考えられ、超高齢化社会を迎えている日本では、罹患する人数は今後さらに増えることが見込まれています。症状は「動作がゆっくりになる(寡動)」や「身体がかたくなる(筋強剛)」、「ふるえる(振戦)」といった運動症状の他、物忘れや睡眠障害、自律神経機能障害など非運動症状といった多彩な症状が出現し、患者さんの生活の質を著しく低下させます。治療は、不足するドパミンの補充としてLドパ治療が一般的ですが、あくまで対症療法であり現在まで根治療法は未開発のままです。症状が進行すると、薬の効く時間が短くなる「ウェアリングオフ*1」や、身体が勝手に動いてしまう「ジスキネジア*2」といった運動合併症が出現し、薬物治療のみならず脳深部刺激療法や、Lドパ持続投与療法などデバイス療法*3も選択されます。

これら複合的な課題を有するパーキンソン病患者さんに対して、脳神経内科専門医による診療のみならず、脳神経外科やリハビリテーション科、精神科による専門診療、看護師や薬剤師、ソーシャルワーカーなどと連携した、在宅医療や社会資源の調整、介護者への教育・心理サポートなど包括的な「ケア」が重要であることは言うまでもありません。

■内容

これまで当院でのシステムは、各診療科での診療や定期検査、デバイス療法導入のための専門外来受診など個々の外来で対応していました。薬剤調整やリハビリテーション、デバイス療法導入のための入院などにおいても各医療者間の情報伝達が一方向的であり、医療者間の情報伝達の煩雑化や患者さんや介護者への時間的・身体的負担が課題となっていました。また神経難病であるパーキンソン病ケアには、在宅医療など社会的資源の調整が必要不可欠ですが、看護師や薬剤師、リハビリテーション療法士、ソーシャルワーカーなど専門職の不足により、患者さんと介護者への提供が十分とは言えませんでした。

そこで、パーキンソン病センターの果たす役割として、専門医と多職種が包括的に運営することにより、パーキンソン病患者さんと介護者に対して、円滑かつ安心な包括的ケアを行うことを目標としています。具体的には、初診の患者さんや定期診療・検査、デバイス療法導入のための評価など一元的な窓口として、パーキンソン病センター専門外来を設置します。受診された個々の患者さんのアンメットニーズに対応すべく、専門医のみならず多職種による相談、情報提供など行います。必要に応じて入院検査や治療を提案し、退院後の社会調整や患者さんや介護者への教育イベント開催などを含めた包括的なケアを提供します。

     

パーキンソン画像1

■今後の展開

当院の脳神経内科は、2023年に米国のパーキンソン病患者団体であるParkinson’s Foundation*4から、Center of the Excellence(COE)の認定を受けました。COEの目指すところは、最先端の治療を患者さんへ提供することのみならず、多職種がチームを組んで患者さん一人ひとりに合わせた最適なケアを提供することとしています。COEの選定には厳格な基準が定められており、2025年現在、世界で54拠点のみが認定を受けています。そのうちアジアでは3拠点、日本では当院のみが認定を受けています。

今後当センターは、個別化医療やリハビリテーションの強化、教育プログラムの拡充、データ活用を通じた研究や臨床試験の促進、国際連携を図ることにより、患者さんと介護者の方々のより良い医療環境を構築し、国内のパーキンソン病診療における中心的役割を遂行してきます。 

<パーキンソン病センター センター長コメント>

パーキンソン病患者さんの症状は千差万別です。そのため、画一的な治療ではなく、個々の患者さんに合わせた治療が必要です。薬物治療だけではなく、生活指導やリハビリテーション、時には精神的なケアなど多角的な治療アプローチが必要です。さらに、脳深部刺激療法やLドパ持続投与治療などデバイス療法も有用な場合があります。そのため、治療は複雑であり専門的な知識が必要ですが、パーキンソン病について世界でもトップレベルの実績がある当院脳神経内科が中心となり、脳神経外科、リハビリテーション科、メンタルクリニック、消化器外科など専門家が一堂に介して患者さんのケアをしてまいります。

    
■用語解説

*1 ウェアリングオフ: パーキンソン病治療において、Lドパを含む薬の効果が次の服薬時間の前に弱まること。

*2 ジスキネジア: パーキンソン病の進行や長期間薬剤を服用することにより生じる、意図しない身体の異常動作のこと。

*3 デバイス療法: 薬剤治療の他に、ウェアリングオフやジスキネジアの軽減のために行う、デバイスを用いた治療のこと。具体的には脳深部刺激療法やレボドパ・カルビドパ配合経腸用液療法、ホスレボドパ・ホスカルビドパ水和物持続皮下注療法などがある。

*4 Parkinson’s Foundation2016年に、National Parkinson FoundationParkinson’s Disease Foundationが合併してできたパーキンソン病患者のケア向上と研究推進を目的とした非営利組織。

   

   

※順天堂医院HPはこちら

https://hosp.juntendo.ac.jp/

https://hosp.juntendo.ac.jp/news/nid00004881.html