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2026.02.12 (THU)
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AI時代の医療人材育成に新たな指標 ― 医学生・研修医のAIに対する態度を測定する日本語翻訳版尺度の開発・検証 ―
順天堂大学医学部総合診療科学講座の藤川裕恭 特任助教・森博威 准教授・矢野裕一朗 教授・内藤俊夫 主任教授、順天堂大学医学部医学教育研究室の西﨑祐史 教授、およびダラム大学近代言語文化学部 近藤カヨ講師の共同研究グループは、医学生・研修医を対象に、人工知能(AI)に対する態度を測定する日本語翻訳版尺度「12項目AI態度尺度」を開発し、その精度を検証しました。全国複数機関(国公立大学、私立大学、大学病院、市中病院)の医学生・研修医を対象に調査を行い、高い信頼性と妥当性を有する測定尺度であることを確認しました。本成果は、今後の日本の医学教育における、AI教育プログラムの設計や効果評価、医療現場へのAI導入支援に貢献することが期待されます。
本論文はJMIR Medical Education誌に2026年1月14日付で公開されました。
本研究成果のポイント
- 医学生・研修医を対象に、AIに対する態度を測定する日本語翻訳版尺度を開発
- 全国複数機関のデータにより、尺度の信頼性・妥当性を確認
- 学習者のAIに対する態度を可視化し、教育と実装を支える基盤を整備
■背景
近年、医学教育や臨床現場におけるAIの活用が急速に進んでいます。一方で、AIに対する期待や不安には個人差があり、医学教育や臨床現場への導入を円滑に進めるうえで課題となることがあります。そこで医学教育においては、学習者がAIをどのように認識し、受け入れているかを把握することが重要だと考えられますが、日本ではその態度を体系的に測定できる、信頼性・妥当性の高い尺度がこれまで存在しませんでした。そこで本研究では、医学生・研修医を対象に、AIに対する態度を定量的に評価できる日本語翻訳版尺度を開発し、その信頼性と妥当性を検証することを目的としました。
■内容
本研究ではまず、質問票の異文化適応に関する、国際的に推奨されているガイドラインに則って、海外で開発された“12-item Attitudes Towards Artificial Intelligence scale (ATTARI-12)”*1の日本語翻訳を行いました。続いて、その日本語翻訳版尺度の信頼性・妥当性を検証するため、2025年6月から7月にかけて、全国複数機関の医学生・研修医を対象に、オンライン・アンケート調査を実施しました。
326人が解析対象となりました。因子分析*2の結果、日本語翻訳版尺度が2因子から構成されており、良好な構造的妥当性を有していることが確認されました。ロボットへの態度との関連を検証し、収束的妥当性も支持されました。また、クロンバックアルファ係数*3を算出したところ、値は0.84であり、良好な内的一貫性信頼性を有していることが確認されました。

■今後の展開
本研究は、AI教育プログラムの設計や効果評価、医療現場へのAI導入支援に貢献するものです。本学では、グローバルAGI総合診療・感染症研究・教育推進事業(文部科学省)として、2026年より「医療とAI」をテーマとした履修プログラムを開催します。本プログラムでは、実施前後での態度変化の評価や国際比較研究への展開などを予定しています。さらに、AIに対する態度と臨床での活用行動や患者安全などとの関連を検討します。
■用語解説
*1 12-item Attitudes Towards Artificial Intelligence scale (ATTARI-12): 2024年に欧米で開発された、AIに対する態度を測定する尺度。12項目から成る尺度で、各々、5つの選択肢(1点=強く反対する〜5点=強く賛成する)から回答する。6項目はネガティブな表現になっており、集計時には反転して処理する(例:1点→5点、2点→4点)。点数が高ければ高いほど、AIに対してポジティブな態度を持っていることを意味する。
*2 因子分析: 多変量解析の一種で、様々な要素(観測変数)の背後にある潜在的な原因(因子)を明らかにするための解析方法。
*3 クロンバックアルファ係数: 複数の質問項目からなる尺度において、それらの項目がどれくらい一貫して同じ概念を測定しているかを示す、内的一貫性の信頼性を評価する指標。値は0から1の範囲を取り、1に近いほど、信頼性が高いとされる。
■原著論文
本研究はJMIR Medical Education誌に2026年1月14日付で公開されました。
タイトル: Adaptation of the Japanese Version of the 12-Item Attitudes Towards Artificial Intelligence Scale for Medical Trainees: Multicenter Development and Validation Study
タイトル(日本語訳): 12項目人工知能態度尺度の日本語版適応(医療研修生向け):多機関開発・検証研究
著者: Hirohisa Fujikawa, Hirotake Mori, Kayo Kondo, Yuji Nishizaki, Yuichiro Yano, Toshio Naito
著者(日本語表記): 藤川裕恭1)2)3)、森博威1)、近藤カヨ4)、西﨑祐史1)5)、矢野裕一朗1)、内藤俊夫1)
著者所属: 1)順天堂大学医学部総合診療科学講座、2)東京大学大学院医学系研究科 医学教育国際研究センター 医学教育学部門、3)慶應義塾大学医学部総合診療教育センター、4)ダラム大学近代言語文化学部、5)順天堂大学医学部医学教育研究室
DOI: 10.2196/81986
本研究は文部科学省 高度医療人材養成拠点形成事業(高度な臨床・研究能力を有する医師養成促進支援)の支援を受け、実施されました。本研究にご協力いただいた皆様には深謝いたします。