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首掛け型ウェアラブルカメラはOSCE評価を支援できるか ―細かな手技の確認を補助する可能性―
順天堂大学医学部医学教育研究室の關根美和助教、西﨑祐史教授、冨木裕一教授らの研究グループは、医学生が臨床実習に進むために合格が必要な客観的臨床能力試験:OSCE(Objective Structured Clinical Examination)*1において、評価者が装着する首掛け型のウェアラブルカメラ*2の映像を評価に活用することが可能かを検証しました。OSCEは、医学生が診察や基本的な手技を安全かつ適切に行えるかを確認する重要な実技試験です。一方で、評価の質を保つには、試験中の様子を後から確認できる映像記録が重要になります。しかし、従来の固定カメラの映像では、評価者や受験者の立ち位置、模擬患者の体位によって視野が遮られ、手元の細かな操作を十分に確認できない場合があります。本研究では、12誘導心電図の電極装着を課題とした模擬OSCEを実施し、評価者が首元に装着したウェアラブルカメラの映像と、頭側・足側に設置した固定カメラの映像による評価可能項目数を比較しました。その結果、首掛け型のウェアラブルカメラの映像では、固定カメラよりも多くの評価項目が「評価可能」と判断され、特に細かな手技の確認に役立つ可能性が示されました。一方で、試験中に評価者がその場で行う評価と録画映像を用いて後日行う再評価の一致度には評価者間でばらつきがみられ、実用化に向けては装着方法や録画条件の標準化が重要であることも示されました。本成果は、首掛け型のウェアラブルカメラが、OSCE評価を支える補助的なツールとなる可能性を示すものです。
本論文は、国際医学教育誌 JMIR Medical Education のオンライン版で2026年5月27日に公開されました。
本研究成果のポイント
- 模擬OSCEにおいて、「試験中にその場で行った評価」と「首掛け型のウェアラブルカメラで録画した映像を用いた後日の再評価」との一致度を比較した。
- 「試験中にその場で行った評価」と「録画映像を用いた後日の再評価」の一致度には評価者間でばらつきがあり、安定した活用には装着方法や録画条件の標準化が重要であることが示された。
- 「首掛け型のウェアラブルカメラ」の映像では、「固定カメラ」よりも多くの評価項目が「評価可能」と判断され、細かな手技の確認に役立つ可能性が示された。
■背景
OSCEは、医学生が臨床実習に進む前に、診察や基本的な手技を安全かつ適切に行えるかを確認するための重要な実技試験です。OSCEに合格しなければ、医学生は臨床実習に進むことができません。
一方で、OSCEの実施には多くの評価者や運営のための人員が必要であり、評価の質を保ちながら安定して実施する体制づくりが課題となっており、近年では、試験中の様子を映像として記録し、評価内容を後から確認できる仕組みの重要性が高まっています。
しかし、従来の固定カメラの映像では、評価者や受験者の立ち位置、模擬患者の体位などによって視野が遮られ、手元の細かな操作や電極の装着位置を十分に確認できない場合があります。特に、12誘導心電図の電極装着のように、細かな手技や位置の確認が必要な課題では、固定カメラの映像だけでは評価に必要な情報を十分に記録できない可能性があります。
そこで本研究グループは、評価者が首元に装着し、評価者の視点に近い映像を記録できる「首掛け型のウェアラブルカメラ」に着目し、このカメラによる映像をOSCEの評価に活用できるかを検証しました。
■内容
本研究では、12誘導心電図の電極装着を課題とした模擬OSCEを実施しました。臨床教育の経験を有する9名の医師が評価者として参加し、試験中にその場で評価を実施しました。その際、評価者が装着した首掛け型のウェアラブルカメラと、頭側と足側に設置した固定カメラで試験の様子を録画しました。
その後、当日の記憶による影響をできるだけ避けるため、約1か月の間隔をおいて、評価者に首掛け型カメラで録画した同じ模擬OSCEの映像を確認してもらい、一か月後に、当日と同じ評価表を用いて受験者の手技を再評価しました。
「試験中にその場で行った評価」と「録画映像を用いた後日の再評価」の一致度を解析したところ、一致度には評価者間でばらつきがみられました。一方で、固定カメラの映像と首掛け型のウェアラブルカメラの映像を比較したところ、首掛け型のウェアラブルカメラの映像では、固定カメラよりも多くの評価項目が確認できると判定されました。特に、心電図の電極装着位置など、手元の細かな操作を確認する場面で役立つ可能性が示されました。
これらの結果から、首掛け型のウェアラブルカメラは、固定カメラでは確認しにくい手元の細かな操作を補完し、固定カメラと併用することで、OSCEにおける映像記録や試験後の確認をより充実させる可能性が示されました。一方で、安定して活用するためには、首掛け型のウェアラブルカメラの装着方法や録画条件を標準化することが重要であることも明らかになりました(図1)。

図1模擬OSCEにおける撮影条件の比較
12誘導心電図電極装着を課題とした模擬OSCEにおいて取得した映像例。(A)評価者装着型首掛け型のウェアラブルカメラ、(B)足元固定カメラ、(C)枕元固定カメラ。評価者装着型首掛け型のウェアラブルカメラは、評価者視点に近い映像を記録でき、固定カメラと比べて細かな手技の確認や事後的な確認を支援する可能性が示されました。なお、個人情報保護のため画像の一部を加工しています。

図2:客観的臨床能力試験(OSCE)評価における首掛け型ウェアラブルカメラの活用可能性
12誘導心電図検査を課題とした模擬OSCEにおいて、試験中にその場で行った評価と録画映像を用いた後日の再評価との一致の程度、ならびに固定カメラと首掛け型ウェアラブルカメラの評価可能性を比較した結果の概要。首掛け型ウェアラブルカメラでは、固定カメラで確認しにくい電極装着などの細かな手技を確認しやすい傾向がみられた。
■今後の展開
本研究は、単一課題・少人数で実施した pilot study ですが、首掛け型のウェアラブルカメラを活用することで、OSCEにおける評価記録の質向上や、限られた人的資源の中での評価支援につながる可能性が示されました。今後は、対象者数を増やした検証、多施設での評価、異なるOSCE課題への適用、装着方法や録画条件の標準化を進めることで、教育現場でより実用的に活用できる仕組みを構築していく予定です。
■用語解説
*1 客観的臨床能力試験: OSCE(Objective Structured Clinical Examination):診察や手技、患者対応などの臨床能力を客観的に評価するための実技試験。
*2 首掛け型のウェアラブルカメラ: 首に装着して、評価者の視点に近い映像を記録できるウェアラブルデバイス。
研究者のコメント
OSCEの評価は、固定カメラによる撮影のみでは、受験者の手元の操作や細かな手技、の動作確認が十分に行えない場面があります。本研究では、評価者が装着型の首掛け型のウェアラブルカメラを活用することで、そのような場面をより明瞭かつ的確に確認できる可能性が示されました。今後は、教育現場で無理なく継続的に活用できるよう、装着方法、録画条件、運用手順を整備し、OSCE評価を支える実用的な補助ツールとして発展させていきたいと考えています。
■原著論文
本研究は国際医学教育誌 JMIR Medical Education のオンライン版で(2026年5月27日付)に公開されました。
タイトル: Exploring the Feasibility of an Examiner-Worn Neck-Mounted Camera for Objective Structured Clinical Examination Assessment: Pilot Feasibility Study
タイトル(日本語訳): 評価者装着型首掛けカメラを用いたOSCE評価の実現可能性:パイロット研究
著者: Miwa Sekine, Yuji Nishizaki, Amane Endo, Takasuke Ogawa, Yoshihide Takeshita, Motomi Nasu, Hiroo Wada, Chizuko Miyamoto, Michiko Oguro, Chie Otake, Yasuhiko Konishi, Yuichi Tomiki
著者(日本語表記): 關根美和1)、西﨑祐史1)、遠藤周1)、小川尊資1)、竹下佳秀1)、那須元美1)、和田裕雄1)、宮本千津子2) 、小黒道子3)、大竹 智江2) 、小西靖彦1)、冨木裕一1)
著者所属: 1)順天堂大学医学部医学教育研究室、2) 東京医療保健大学千葉看護学部、3)聖路加国際大学看護学研究科 ウィメンズヘルス・助産学
DOI: 10.2196/87483
本研究は 公益財団法人医学教育振興財団(Japan Medical Education Foundation)医学教育研究助成(2024) の支援を受けて実施されました。なお、本研究にご協力いただいた皆様に深謝いたします。