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日本医療研究開発機構(AMED)「令和8年度 長寿科学研究開発事業」 の採択決定について

順天堂大学(学長:代田 浩之)は、このたび日本医療研究開発機構(AMED)が公募した「令和8年度 長寿科学研究開発事業」に採択されました。本事業では、介護施設、地域などと連携し、介護予防や重度化防止に貢献するAI活用フレイル検出・評価アルゴリズムの開発を行っていきます。

      

<長寿科学研究開発事業 事業目標>

1. 高齢者に特有の疾患・病態・徴候(例:フレイル、サルコペニア等、以下「疾患等」という。)に着目し、老年医学の観点から健康寿命延伸に寄与する予防手法の開発

2. 加齢に伴う身体機能の低下や日常的に高頻度で遭遇する疾患等により介護を要する状態であっても、

生活の質の維持、向上が図れるケアの手法や評価方法の開発

3. 質の高い医療・介護サービスが普遍的に提供できる社会基盤の整備に貢献する研究成果の創出

4. 高齢者の生活に直結する研究成果を産出し、研究成果の社会実装の推進

【採択事業の概要】

課題名称   : 「フレイル予防の介入のループを実現するAIによる早期検出・個別化介入統合モデルの研究開発」

研究開発期間 : 令和8年5月7日から令和9年3月31日

研究開発代表者: 松田 雅弘 (順天堂大学 保健医療学部 理学療法学科 教授)

研究開発分担者: 宮内 克己(順天堂東京江東高齢者医療センター 院長)

        浅岡 大介(順天堂東京江東高齢者医療センター 消化器内科 教授)

        松野  圭(順天堂東京江東高齢者医療センター 呼吸器内科 准教授)

        高橋 哲也 (順天堂大学 保健医療学部 理学療法学科 教授) 他

採択ポイント(本事業目的)

 ・簡易的な動作分析とデジタルコンテンツを活用してフレイル状態を把握

 ・フレイル予防に対して医療専門職による適切なアドバイスを常に確認

 ・システムを活用することで、地域差のないフレイル予防が可能

    

我が国では、高齢化の進行に伴い、要介護高齢者の増加や医療・介護費の増大が大きな社会課題となっています。特に「フレイル*1」は、健康な状態と要介護状態の中間に位置する可逆的段階として注目されており、早期発見と適切な介入による重症化予防が重要とされています。しかし現在のフレイル評価は、質問票や単回の身体機能検査が中心のため、評価者や施設によるばらつきが生じやすく、個別化された介入支援につながりにくいという課題があります(図1)。近年、AI(人工知能)*2を活用したマーカレス動作解析技術*3が進歩していることから、本研究では動画解析と簡易質問紙を組み合わせ、フレイル状態を早期に検出し、個人ごとの進行パターンに応じた介入提案まで可能とするAI活用フレイル評価システムの開発を目指します。

■内容

本研究開発事業では、順天堂大学医学部附属順天堂東京江東高齢者医療センターのフレイル外来をはじめ、地域在住(都内)高齢者、介護施設、高齢者病棟など多様な環境でデータ収集を行い、AIを用いたフレイル検出・評価アルゴリズムの開発を行います。研究では、起立動作、歩行動作、方向転換などの日常生活に近い動作をタブレット端末で撮影し、マーカレス骨格推定技術*4を用いて関節運動や歩行パターンを解析します。さらに、認知機能評価、生活状況、社会参加状況、社会的孤立などを評価する簡易質問紙を組み合わせることで、身体的・心理的・社会的要因を統合した包括的なフレイル評価を実現します。

また、フレイルを一律に扱うのではなく、フレイルに近づく進行パターンをAIによる特徴量解析で分類分けした結果をもとに、個人の状態に応じた運動支援、生活指導、社会参加支援などを提示する「評価と介入が一体化したシステム」を構築します。将来的には、運動動画配信や遠隔指導機能を備えたアプリケーションへの展開も予定しており、自宅や地域でも継続的に利用可能な介護予防支援を実現することを目指しています。

       

松田先生画像1

図1. 現在のフレイル評価とそのアプローチの課題

フレイル外来など専門性の高い医療施設等では、身体機能、生活背景、心理・社会的側面を含めた総合的判断が行われていますが、その判断は評価者の経験に依存する部分も大きく、地域や他施設で同等に再現することが難しく人員を多く必要とします。その結果、医療機関・地域・介護サービス間で評価基準が統一されず、連続した支援につながりにくい構造的課題が存在しています。

■今後の展開

医療機関だけでなく、介護施設、地域健康診断、在宅支援など多様な現場で利用可能な、省力的かつ標準化されたフレイル評価システムの社会実装を目指しています。 特に、カメラ1台とタブレット端末のみで実施可能な簡便性と、AIによる再現性・説明可能性を備えることで、専門職不足が深刻化する地域医療・介護現場においても活用できるシステムとして発展させていきます。さらに、評価から介入までを一体化することで、従来の「評価して終わり」のフレイル対策から脱却し、高齢者一人ひとりの状態に応じた個別最適化介護予防モデルの実現を目指します。本研究成果は、介護重症化予防、健康寿命延伸、医療・介護負担軽減への貢献が期待されます。

■用語解説

*1 フレイル: 健康な状態と要介護状態の中間に位置する可逆的段階

*2 AI(人工知能): 言語の理解や推論、問題解決などの知的行動を人間に代わってコンピュータに行わせる技術

*3 マーカレス動作解析技術: マーカーや専用スーツを装着することなく、カメラが設置された空間内に計測対象である人が入るだけで、身体の動きをリアルタイムに解析できる技術

*4 マーカレス骨格推定技術: 画像から人物や動物の関節位置や骨格構造をマーカレスで推定するAI技術

研究者のコメント 

フレイルや介護状態の進行を予防することは、人生100年時代に突入した現代にとって大きな課題とされています。現在、多くの医療機関や地域で、これらの予防に関する取り組みを実施していますが、さらなる予防効果が望まれています。近年、医療・介護業界でもデジタル化(DX化)が起きており、これらの技術を活かすことで、私たちの身近な機器(デバイス)で現在の身体や認知状態を把握して、医療専門職監修によるアドバイスを受けることを目指しています。例えると血圧計のように自己チェックして自分自身でも対応でき、必要に応じて専門家に相談できる仕組みです。これらのAIシステムが完成することで、健康で生活するための力強い伴走者となる可能性があります。