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睡眠と免疫・身体機能に着目した共同研究の成果 ― 見守り支援システムの活用により、介護スタッフの夜間業務の効率化と疲労軽減に寄与 ―

順天堂大学(東京都文京区、学長 代田 浩之)とNTT都市開発株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長 池田 康、以下「NTT都市開発」)は、睡眠と免疫・身体機能に着目した共同研究講座を設置し、介護現場運用の改善やDXの活用、産学連携による実証的な調査・検討を重ね、介護スタッフの働きやすい環境づくりや、ケアの質の向上につながるさまざまな知見を得ました。

共同研究講座概要

講座名 : 免疫・身体機能等睡眠の科学講座

責任者 : 膠原病・リウマチ内科学 教授 山路 健

研究機関 : 2023年5月1日から2026年4月30日

本研究成果のポイント

  • 実際の介護現場(施設)を調査フィールドとして、睡眠・免疫機能・身体機能に着目した約3年間の共同研究を実施しました。
  • 睡眠計測センサーを用いた見守り支援システム*1の活用により、入居者の睡眠・覚醒状況の把握と夜間巡視業務の効率化に寄与する可能性が確認されました。
  • PVT調査*2、免疫学的分析、アンケート調査および現場ヒアリングを通じて、介護スタッフの負担軽減や働きやすい環境づくりにつながる知見が得られました。
■背景

高齢化の進展に伴い、介護分野においては、現場で働く介護スタッフの負担軽減や労働環境の改善、持続可能な運営体制の構築が重要な社会課題となっています。特に「睡眠衛生(sleep health)」は、近年、免疫機能や認知機能、身体機能と密接に関連することが指摘されており、学術的な知見と住環境・ケアの工夫を組み合わせた実証的な研究が求められています。このような背景のもと介護・住環境を横断した共同研究講座を設置し、実臨床および実生活に即した研究を実施しました。

■内容

本研究では、実際の介護現場を調査フィールドとして、段階的に研究施策(図1)を導入し、評価を重ねる形で検討を行いました。2023年7月に睡眠計測センサーを用いた見守り支援システム(以下、見守り支援システム)を導入し、夜勤帯の巡視業務を支援する仕組みとして試行的な運用を開始しました。その後、運用を通じて得られた知見を踏まえ、2025年4月より見守り支援システムを本格的に運用し、スタッフの業務負担軽減および業務効率化を目的として、入居者の睡眠・覚醒状況の把握を可能とする環境整備を進めました。

見守り支援システムの本格運用前後におけるスタッフの労働環境の把握・評価を目的として、勤務スタッフを対象に、覚醒度に関するパフォーマンスを客観的に評価できる精神運動覚醒検調査psychomotor vigilance test, PVT)を実施しました。2024年9月に第1回PVT調査を行い、本格運用前の夜勤を含む勤務環境と覚醒・疲労状態を評価しました。さらに、見守り支援システムの本格運用開始後である2025年9月に第2回PVT調査を実施し、運用定着後における労働環境や覚醒・疲労状態の変化について比較・検討を行いました。

これらの調査と並行して、見守り支援システム運用に伴うストレスや負担の変化が免疫細胞のストレス状態および活性に与える影響を評価するため、フローサイトメトリー*3による免疫学的分析を実施し、探索的な検討を行いました。また、介護スタッフの業務負担感やストレス、働きやすさ等に関する主観的評価を把握するため、直前1週間の仕事時間、直近の睡眠時間、仕事の負担感(10段階評価)、主観的健康感、アテネ不眠尺度(Athens Insomnia Scale)を用いた不眠の評価、マインドセット、抑うつ状態(CES-D)、バーンアウトなどの心理学的評価を行うためのアンケート調査も実施しました。

本研究を通じて、睡眠や覚醒に関わるデータを活用した見守り環境の整備が、夜勤を含む勤務環境の在り方を検討する上で有用であることが確認されました。実施施設においては、見守り支援システムを活用することで、夜間帯における入居者の状態把握が可能となり、夜間巡視業務の進め方に一定の工夫の余地が生まれました。こうした環境整備は、入居者の生活リズムへの配慮とあわせて、夜勤スタッフの業務負担や心理的負荷の軽減につながる可能性を示すものと考えられます。

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図1.実施した調査・施策の一覧

     

【現場ヒアリングに基づく考察】

本研究では、定量的なデータ分析に加え、実施施設管理者および介護スタッフへのヒアリングを実施し、見守り支援システム導入後の運用変化や現場での受け止めについて質的な情報を収集しました。

実施施設管理者からは、見守り支援システムの導入により、夜間帯の職員の稼働負担が軽減されたと感じていること、訪室せずとも入居者の状況を一覧で把握できるようになったことが夜勤スタッフの働き方にとって大きな変化であったことなどが示されました。また、状態変化時に記録データをもとに状況を振り返ることができ、その後の対応検討にも活用できているとの意見がありました。さらに、実際に見守り支援システム導入前後に施行された免疫学的分析においては、少数例(3例)ではあるもののシステム導入後の免疫細胞指標としてのγH2AXおよびCD38の低下が認められており、生体ストレス反応の改善が認められる可能性が示唆されました。

介護スタッフからは、見守り支援システム導入後は勤務中の歩数が減り、以前より疲労を感じにくくなったこと、入居者が眠れているかどうかをモニター上で確認できるようになったことで巡視のあり方が変わったこと、入居者を起こしてしまう不安が減ったことなどが挙げられました。日勤帯においても、睡眠日誌や心拍・呼吸日誌を確認することで、入居者への声かけの頻度や関わり方を考える際の参考になっているとの意見が得られました。

      

NTT画像1

図2.研究成果

■今後の展開

本研究で得られた知見は、介護現場におけるDX化やICT技術の導入を、学術的知見や介護現場のノウハウと組み合わせて活用する取り組みにつながるものです。今後も、睡眠・免疫機能・身体機能の観点から、介護スタッフの働きやすい環境づくり、ケアの質の向上、Well-beingな社会の実現に資する取り組みへと幅広くつなげていくことが期待されます。

■用語解説

*1 睡眠計測センサーを用いた見守り支援システム: 体動(寝返り、呼吸、心拍など)を検出して、睡眠状態を測定する非装着・非侵襲の睡眠計測センサーを用いて利用者の見守りを支援する介護施設向けのシステム。本研究では、夜勤帯の巡視業務を補助し、入居者の状態把握とスタッフの業務負担軽減を図るための環境整備の一要素として活用しました。

*2 PVT(Psychomotor Vigilance Test:精神運動覚醒検査): 反応時間を用いて覚醒度や注意力、疲労の程度を、覚醒度に関連するパフォーマンスとして客観的に評価する検査手法。主に睡眠不足や夜勤などが注意力・覚醒状態に与える影響を客観的に把握する目的で用いられます。

*3 フローサイトメトリー: 血液などの細胞を一つずつ解析し、免疫細胞の種類や状態を測定する分析手法。