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2026.10.14 (WED)
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科学技術振興機構(JST)「2026年度 戦略的創造研究推進事業(CREST)」 の採択決定について
順天堂大学(学長:代田 浩之)は、このたび科学技術振興機構(JST)が公募した「戦略的創造研究推進事業(CREST)」の「異分野融合による超生体組織の創製と新機能の創出」領域にて、老化の本質的メカニズムの解明を目的とした研究課題に採択されました。
不老生物として知られる水生生物「ヒドラ」を用いて、老化に必須となる遺伝子やメカニズムの探索を行うプロジェクトを開始します。
研究のポイント
-
老化の本質的メカニズム探索に不老生物「ヒドラ」を活用
- 抗老化医療への展開、超生体マテリアル創出、全細胞空間解析技術等への展開を期待
採択の概要
プログラム名: 科学技術振興機構・戦略的創造研究推進事業(JST-CREST)
研究領域: 「異分野融合による超生体組織の創製と新機能の創出」
(研究総括: 秋吉一成・京都大学 高等研究院 物質-細胞統合システム拠点 特定拠点教授)
研究課題名: 不老生物ヒドラの「超生体」化:個体老化再構成と老化始原探索
研究代表者: 洲崎 悦生(順天堂大学 大学院医学研究科 主任教授)
研究期間: 2026年10月 ~ 2032年3月 (5.5年間)
■背景
老化は誰にとっても身近な現象ですが、「なぜ、どのように個体が老いるのか」という本質は、いまだ十分に解明されていません。従来の老化研究は、もともと老化する生物(マウスや線虫など)を用いて老化を早めたり遅らせたりする方法が中心でした。しかしこの方法では、調べている要因が老化の根本原因なのか、すでに進行している老化の過程を修飾させているだけなのかを区別することが困難でした。
そこで本研究チームは、老化しない生物である淡水性刺胞動物「ヒドラ」に注目しました。老化しないヒドラに、老化に関わる候補因子を人工的に加えて老化を「再構成」できれば、その因子が老化を引き起こす十分な要因であることを直接示せます。本研究は、この「老化再構成」という新しい実験の枠組みを確立し、個体老化の本質の解明を目指します。
■内容
本研究は、本学医学研究科 洲崎悦生主任教授を代表者とし、慶應義塾大学、大阪大学、国立研究開発法人物質・材料研究機構(NIMS)が共同で取り組みます。
ヒドラは、以下の特徴から「老化再構成に」適したモデルです。
- 長期の観察において、年齢とともに死亡率が上がる現象(個体老化現象)が見られないことが確認されています。
- 近縁種の中に、低温などの環境変化によって老化のような変化を示す種がいます。
- 全身が約5〜10万個の細胞で構成されており、すべての細胞を解析できます。
- 細胞をバラバラに解離させても、集約させることで個体として再生します。
本プロジェクトは、以下の3つのアプローチを連携させて推進します。
- 老化を再現する「切り口」の探索:老化しないヒドラと老化するヒドラのゲノムや細胞の構成を比較し、老化の鍵となる遺伝子や細胞の候補を絞り込みます。
- ヒドラを操作する技術の開発:遺伝子を導入・改変する技術と、3Dバイオプリンターを用いて細胞の種類・数・配置を人工的に組み替える技術を開発し、老化を再現した「超生体ヒドラ」を作製します。
- 老化を測定する技術の開発:多数のヒドラを1匹ずつ自動で飼育・観察して生存率の推移を記録する装置「Hydra-hive」と、ヒドラ全身の全細胞を3次元で解析する技術「Hydrascopy」を開発します。
これまで予備的な成果として、老化しないヒドラの染色体レベルのゲノム解読に成功し、老化との関わりが知られる「Klotho(クロトー)遺伝子」などが欠損していることや、エネルギー代謝の特徴を明らかにしました(Genome Biology and Evolution誌、2026年8月掲載)。老化を人為的に「再構成」することでその原因を突き止める試みは、これまでほとんど例がありません。このアプローチが本研究の特徴です。
■今後の展開
老化を引き起こすのに十分な因子や細胞が見つかれば、老化の仕組みの理解が飛躍的に進みます。ヒドラで発見された因子を、老化する生物で制御することで老化が抑えられるかも検証し、種を超えた共通の老化要因であるかを検証します。現在の課題は、ヒドラに対する遺伝子操作技術がまだ十分に確立されていない点です。本研究では、複数の遺伝子導入方法や、細胞組み替え手法を並行して進めることで、課題の克服を目指します。
本研究の成果は、ヒトの抗老化医療や健康寿命の延伸に新たな知見をもたらすものと期待されています。また、開発する飼育・観察装置や全細胞解析技術は、幅広い研究分野へ応用可能です。さらに、ヒドラの不老性と再生能力を活かして、半永久的に駆動・自己修復を行う環境モニタリング用センサーなど、材料システムの開発も視野に入れて進めてまいります。