免疫寛容プロジェクトについて

免疫/免疫寛容とは

免疫とは、文字通り病原菌を含む体外からの刺激や攻撃物質(非自己)を認識して反応し、生体への障害を守る現象(システム)を指します。同時に、免疫システムは生体内の自己タンパク質や組織を認識しますが、それらに対しては反応・攻撃することはありません。この自己への不応答性は“免疫寛容”と呼ばれ、一見非自己への攻撃的免疫応答反応とパラドキシカルとも見えますが、免疫系はこの両者を巧妙に調節して生体維持機構に寄与しています。しかし、免疫寛容の実態に関しての知見は充分とは言えません。例えば、このバランス維持が崩れて免疫寛容が破綻してしまうと、自己・非自己の区別な免疫系が応答して、自己免疫疾患に代表される免疫病が惹起されます。しかし、その発症機序とそれに伴う治療法は不明な部分が多く残されています。一方ヒトを含む生物生体には非自己への免疫寛容現象が存在しますが、その機序は明らかではありません。例えば、日常食する外来食物に対する生体反応には、どのような免疫寛容機序が働いているのか?さらに、胎児の存在維持に関する機構解明も生命の維持にとって根源的な命題です。

免疫免疫寛容とは01
免疫免疫寛容とは02
免疫免疫寛容とは03

免疫寛容プロジェクトとは

免疫寛容プロジェクトでは、最も免疫反応が強い移植拒絶反応の制御と免疫寛容、すなわち“抑制性免疫記憶”の成立とその維持機構という大きな課題解明に挑戦し、寛容状態を免疫学的に正確に判断する指標を見いだすことで、自己免疫疾患発症・発癌のメカニズムのみならず、臓器移植・自己免疫疾患・再生医療における寛容誘導の新規治療法の展開につないでいきます。
またこれまでの基礎研究・橋渡し臨床研究の成果により、臓器移植後の免疫寛容誘導する誘導型抑制性T細胞の製造と治験、臨床的に免疫寛容を診断する検査法開発が始まっています。



誘導型抑制性T細胞とは

順天堂大学 奥村 康 名誉教授は、これまでに免疫寛容を誘導するKey分子であるCD86を発見し、共刺激と呼ばれるCD80/86とCD28の相互作用を阻害することで、抗原特異的なアナジー細胞を誘導することに成功しました。1) このアナジー細胞は、抗原に反応しないだけでなく、同じ抗原に反応している他の細胞の働きを抑えることが明らかになっており、サルの移植腎への拒絶反応の抑制効果も確認されています。2)3)

我々は、この細胞を、誘導型抑制性T細胞と呼んでおり、ex vivoで抗原特異的な誘導型抑制性T細胞を誘導し、体内に戻すことで、抗原特異的に免疫反応を抑制できると考えています。
これまでに他大学との共同研究の下、生体肝移植患者及び生体腎移植患者を対象として、誘導型抑制性T細胞の投与を実施し、その安全性と有効性を確認してきました。4), 5)

現在、奥村名誉教授の指導の下、順天堂大学 内田 浩一郎 准教授が代表として、「生体肝移植における誘導型抑制性T細胞(JB-101)による免疫寛容誘導能及び安全性を評価する第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験」を実施しています。
誘導型抑制性T細胞等により免疫寛容になった患者のデータレジストリーを構築し、免疫寛容になる過程を分析することにより、免疫寛容の維持機構の解明を目指しています。そのために、基礎研究と、治験や臨床研究とをリンクさせて、研究を推進しています。

1) Nature 1993, Azuma M, Okumura K
2) Science 1994, Lombardi et al
3) J.Clin.Inv 2005, Bashuda H, Okumura K
4) Hepatology 2016, Todo S, Okumura K
5) J Transplant Res 2017 2(1), Teraoka S, Okumura K
内田先生、奥村先生写真
免疫寛容プロジェクトについて 図

産官学連携

免疫寛容プロジェクトでは、免疫寛容の維持機構の解明を目指し、公的資金を元に、国内外のアカデミア、企業と連携しながら、研究に取り組んでいます。

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