コラム 基本情報技術者試験の難易度は?試験科目や科目別の難易度を紹介

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エンジニアキャリアへの最初のステップとされる基本情報技術者試験の難易度について疑問をお持ちの方もいるかもしれません。2023年4月に試験制度が変更され、「難しくなったのでは?」という不安の声も聞かれます。本記事では、基本情報技術者試験の概要、合格率の推移、試験範囲と合格基準点をご紹介し、他の試験との比較を交えながら、難易度について解説します。試験制度変更に伴う難易度の変化や具体的な変更点、効果的な勉強方法や一般的な勉強時間についてもお伝えし、基本情報技術者試験に関するさまざまな疑問にお答えします。

 

 

基本情報技術者試験の難易度とは?

情報処理技術者試験の試験区分の一つである基本情報技術者試験の難易度について見ていきましょう。

  

基本情報技術者試験とは?

情報処理技術者試験の区分の一つ「基本情報技術者試験」は、情報処理業務に従事する者の技術向上を促進するために経済産業大臣が主催する国家試験であり、情報処理技術における基本的な知識と技能を証明するものです。

ITエンジニアとしてのキャリアを構築する際には、最初に基本情報技術者試験を受験することがおすすめされます。しっかりと基礎を築くことで、その後の応用力が向上します。取得した知識を基に、次のステップである応用情報技術者試験を目指すことが可能です。試験は科目A試験と科目B試験に分かれており、どちらも出題形式は多肢選択式です。

参照:基本情報技術者試験 | 試験情報 | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構

https://www.ipa.go.jp/shiken/kubun/fe.html

 

基本情報技術者試験の合格率の遷移

基本情報技術者試験の過去8回の合格率の推移を以下の表にまとめましたので、参考にしてください。

開催

受験者数

合格者数

合格率

平成27年度

101,221

26,109

25.8

平成28年度

99,999

26,591

26.6

平成29年度

105,252

23,288

22.1

平成30年度

111,381

28,552

25.6

令和元年度

121,556

31,224

25.7

令和2年度

52,993

25,499

48.1

令和3年度

85,428

34,734

40.7

令和4年度

101,620

38,033

37.4

 

 

平均合格率

31.5

 

データを見るとわかるように、過去8回に実施された試験の平均合格率は31.5%であり、決して簡単ではなく、難易度が低い試験ではありません。

なお、令和2年度以降、合格率が急上昇していますが、上昇した理由は、CBT方式導入後に、A試験・B試験が一時的に別日で受験できたことなどがあるため、試験の難易度とは異なる要因であり、例外として考えたほうがよいでしょう。

参照:

情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験  推移表(平成21年度春期以降)

 

統計情報(全試験区分) | 試験情報 | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構

https://www.ipa.go.jp/shiken/reports/toukei_all.html

 

基本情報技術者試験の試験範囲・合格基準点は?

科目A試験と科目B試験それぞれの試験時間、出題数、解答数、合格点、満点は以下の通りです。

 

科目A試験

科目B試験

試験時間

90分

100分

出題数

60問(四肢択)

20問(多岐選択式)

解答数

60問

20問

合格点

600点以上

600点以上

満点

1,000点

1,000点

 

試験範囲

科目A試験:テクノロジー系、マネジメント系、ストラテジ系

※テクノロジー系の問題数が多く、全体の3分の2を占めます。

科目B試験:アルゴリズム・プログラミング、セキュリティ

 

参照:

基本情報技術者試験 | 試験情報 | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構

https://www.ipa.go.jp/shiken/kubun/fe.html

統計情報|基本情報技術者試験.com

https://www.fe-siken.com/fetoukei.html

 

2023年の制度変更によって難易度は変化した?

まず、2023年の試験制度の主な変更点を見ていきましょう。

 

・受験回数が年2回から無制限になり、いつでも受験可。

・これまでの午前試験・午後試験の区分から、科目A試験・科目B試験に変更。

・科目A試験の問題数が80問から60問に、試験時間が150分から90分に短縮

・科目B試験は大問形式から小問形式になり、試験時間は150分から100分に短縮。

・科目B試験で個別プログラム言語(C、Java、Pythonなど)の出題が廃止され、疑似言語に統一。

 

以上が主な変更点ですが、求められるレベルや対象者は大きく変わっていません。しっかりと対策を行い、十分な準備をすれば、合格を掴むことができるでしょう。

また、擬似言語に問題内容が統一されたことで、特定のプログラミング言語に詳しい人は若干解きにくさを感じることがあるでしょう。しかし、プログラミングの基本原則を理解していれば、問題を解くことは十分可能です。詳細については、IPA公式サイトの以下のページを参照してください。

 

参照:情報処理技術者試験における出題範囲・シラバス等の変更内容の公表について(基本情報技術者試験、情報セキュリティマネジメント試験の通年試験化) | 試験情報 | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構

https://www.ipa.go.jp/shiken/syllabus/henkou/2022/20220425.html

 

  

科目B試験の擬似言語が難しい理由とは?

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科目B試験の擬似言語はなぜ難しいと言われるのか、その理由として以下の2つが挙げられます。

  

理由1.普遍的・本質的なプログラミングの理解が求められる

2023年の試験制度の変更により、プログラムの問題で特定の言語を選べた項目で、個別プログラム言語での出題がなくなり、代わりに擬似言語での出題になりました。この変更により、特定のプログラミング言語に詳しい人にとっては、やや難しいと感じることもあるでしょう。

擬似言語は、一般的に用いられる記述法を交えることにより、アルゴリズムの理解を助けるために使われます。そのため、新しい試験内容ではプログラミング言語に依存しない、普遍的・本質的な理解力が必要です。しかし、プログラミングの本質を理解していれば、問題は解けます。IPA(情報処理推進機構)のウェブサイトには、サンプル問題が載っていますので、そこから問題の傾向を把握してみると良いでしょう。

 

理由2.小問20問をすべて解かなければならない

変更後は、大問形式から小問形式になり、全問必須解答となり、出題された20の小問すべてに解答する必要があります。変更前の形式では、11問の大問から必須の3問(情報セキュリティ、データ構造・アルゴリズム、ソフトウェア開発)と、さらに2問を選んで解答する形式でした。しかし、制度変更により、出題された小問すべてに解答する形式に変更されました。

また、この20問のうち、これまで必須解答であった「データ構造及びアルゴリズム」「情報セキュリティ」の2つの分野が中心となります。さらに「アルゴリズムとプログラミング」に関する擬似言語を用いた問題が8割を占めるため、科目B試験において擬似言語をクリアできるかどうかが、合格基準点を獲得するためのキーとなるでしょう。

 

 

類似する試験との難易度比較

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出典:https://www.meti.go.jp/committee/sankoushin/jouhoukeizai/jinzai/pdf/report_001_00.pdf

経済産業省「共通キャリア・スキルフレームワークのレベルと新情報処理技術者試験の対応」

 

基本情報技術者試験の難易度はどれ程のレベルなのか、類似する試験と比較してみました。

 

ITパスポート試験とのレベル比較 

まず、ITパスポートは主に「IT利用者」の立場に焦点を当て、そのスキルを評価する資格です。対照的に、基本情報技術者の試験では、ITを活用した製品、サービス、およびソフトウェアを「作る側」のスキルが問われます。

共通キャリア・スキルフレームワークで、難易度を比較すると、ITパスポートの試験は情報処理技術者試験の中で「レベル1」に相当します。一方、基本情報技術者の試験は「レベル2」であり、難易度が高いと考えられます。

 

参照:

産業構造審議会情報経済分科会 人材育成WG報告書 |経済産業省

https://www.meti.go.jp/committee/sankoushin/jouhoukeizai/jinzai/pdf/report_001_00.pdf

※P.45「共通キャリア・スキルフレームワークのレベルと新情報処理技術者試験の対応」

【ITパスポート試験】iパスとは

https://www3.jitec.ipa.go.jp/JitesCbt/html/about/about.html

 

応用情報技術者試験とのレベル比較

応用情報技術者試験は、基本情報技術者試験と比較して難易度が高いとされています。情報処理技術者試験において、応用情報技術者試験は「レベル3」に位置づけられており、ワンランク上のITエンジニアであることを示しています。本試験に合格することで、技術から管理、経営までのさまざまな領域において広範な知識と実践力を身につけることができます。特に、システム開発、IT基盤構築などの分野で重要な役割を果たすことが期待されています。一方で、基本情報技術者試験は「レベル2」に分類され、ITエンジニアとしてのキャリアをスタートする際に、資格取得が推奨されています。

 

参照:

産業構造審議会情報経済分科会 人材育成WG報告書 |経済産業省

https://www.meti.go.jp/committee/sankoushin/jouhoukeizai/jinzai/pdf/report_001_00.pdf

※P.45「共通キャリア・スキルフレームワークのレベルと新情報処理技術者試験の対応」

応用情報技術者試験 | 試験情報 | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構

https://www.ipa.go.jp/shiken/kubun/ap.html

IPA情報処理推進機構「応用情報技術者試験」

  

高度情報処理技術者試験とのレベル比較

高度情報処理技術者試験はIPAが主催する国家試験で、情報処理技術者のスキルレベル4に相当します。最高難易度のレベルで、応用情報技術者試験よりも高度です。本試験は8つの区分で構成され、各試験はプロジェクト責任者としての役割を果たす能力を持つ人材を対象にしています。

基本情報技術者、応用情報技術者というステップを踏んで、最後に挑戦するとよいでしょう。

 

参照:応用情報技術者試験 | 試験情報 | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構

https://www.ipa.go.jp/shiken/kubun/list.html

 

 

基本情報技術者試験で合格するための勉強方法・勉強時間とは?

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基本情報技術者試験に合格するために必要な勉強方法と勉強時間の目安をご紹介します。

 

おすすめ勉強法

基本情報技術者試験では、科目A試験と科目B試験があるため、それぞれに対する効果的な対策を検討しましょう。

科目A試験では、重要な用語の暗記が必要です。出題内容は過去問から直接出題されることもあるため、多くの過去問を解いておくことが重要です。科目B試験は、アルゴリズムと情報セキュリティが中心となります。アルゴリズムについては、ロジックの暗記や変数の扱い方をしっかり覚えましょう。

勉強方法として、基本的にはテキスト学習による独学と講座受講が挙げられます。独学のメリットは、自分のペースで勉強でき、費用を抑えられることです。講座を受講する場合、一定の費用がかかりますが、初心者や独学が不安な方、モチベーションを維持できない方には受講がおすすめです。また、大学に入学してデータサイエンスを学びながら基本情報技術者試験を目指すという選択肢もあります。

  

勉強時間目安は50時間~200時間

合格に必要な勉強時間は、一般的には50時間から200時間です。これは、受験者のITに関する基本知識の有無によって異なります。

ITに基本的な知識がある場合、約50時間の勉強で合格を目指せます。1日に1〜2時間程の勉強を1ヶ月間続けることで、合格が狙えるでしょう。したがって、ITの基本知識を有することは明らかな利点です。

一方で、全くの初心者の場合は約200時間の勉強が必要となります。1日に2〜3時間の勉強を2〜3ヶ月続けることで、合格に近づけるでしょう。

2023年の試験制度変更に伴い、基本情報技術者試験は通年実施となりましたが、それ以前は年2回の実施でした。制度変更前のサイクルを基に、半年の勉強期間を設定した場合、比較的余裕をもって対策が進められるでしょう。

 

 

基本情報技術者試験合格を目指すなら”順天堂大学”

順天堂大学は185年の歴史を誇り、健康総合大学・大学院大学として、9学部、5研究科、6附属病院を有しています。国内ではまれな「医療×国際教養」と「医療×データサイエンス」の学習環境を提供し、多岐にわたる視点から次世代のグローバル社会の健康課題に挑戦する人材を育成しています。

「仁」の心、「不断前進」の姿勢、「三無主義」の考えに基づいて、社会と向き合い、人々の健康と医療の未来を支える健康総合大学を目指しているのが順天堂大学です。

現代では、科学技術の進化に伴い、医療やスポーツなどの分野でもデータ分析が求められています。この変化を踏まえて、2023年4月、順天堂大学は「健康データサイエンス学部」を設立。

新学部では、1・2年次にデータ分析力と医療・スポーツ領域の基礎知識を強化するカリキュラムが展開され、統計学者やコンピュータの専門家、医師による指導が行われます。3・4年次には附属病院や連携企業での実践的なインターンシップを通じて、健康データサイエンティストとしてのスキルを磨く機会が提供される予定です。

 

健康データサイエンス学部|順天堂大学

https://www.juntendo.ac.jp/academics/faculty/hds/

資料請求|順天堂大学健康データサイエンス学部

https://www.umcnavi.jp/jtm/sm/index.asp

お問い合わせ|順天堂大学健康データサイエンス学部

https://www.juntendo.ac.jp/academics/faculty/hds/contact/contact/

 

 

まとめ

基本情報技術者試験は、情報処理技術者試験の中で「レベル2」に位置しています。この試験で身につけた知識を基に、次なるステップとしてレベル3の応用情報技術者試験を目指すことがすすめられます。2023年の制度変更により、科目B試験が疑似言語に統一されたため、特定のプログラミング言語に詳しい人にとっては若干難易度が上がるかもしれません。試験対策をしっかり立てて試験に臨んでください。また、2023年4月からは通年試験化が導入され、随時受験が可能となり、合格の機会が増えました。IT分野でのキャリアを考えるなら、ぜひ基本情報技術者の資格に挑戦してみてください。

  

参考サイト:

https://www.bizlearn.jp/blogs/useful/3025

https://studying.jp/kihonjoho/about-more/kiji-1.html

https://www.tac-school.co.jp/kouza_joho/joho_fe/fe_dokugaku.html

https://japanuniversityrankings.jp/college/00062/index.html