コラム ITパスポート試験の難易度は?合格率や試験の概要、勉強方法を解説

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ITに関する基礎知識を証明したい場合、ITパスポートがおすすめです。本試験は、情報処理技術者試験の一環であり、基本的なIT知識の理解が求められます。この記事では、まずITパスポート試験の概要、取得のメリット、他の試験との違いについて詳しく説明し、その後試験の難易度、合格率の推移、合格基準、試験の出題範囲、そして勉強時間や勉強方法まで、徹底的に解説します。

 

 

ITパスポート試験とは? 

ITパスポートはITについての基礎的な知識が問われる試験です。本試験はIT系において「入門レベル」に位置づけられており、エンジニア職にとどまらず、ITの知識が少ない方でも取得しやすい傾向があります。以下では、ITパスポート試験の概要、ITパスポートを取得するメリット、類似する試験との違いについて解説します。

 

ITパスポート試験の概要

ITパスポート試験の試験日・申込受付期間・試験会場などについては、以下のとおりです。

 

項目

内容

参照

試験日

随時実施

試験開催状況一覧

申込受付期間

試験実施の3ヶ月前から前日まで

受験要綱

試験会場

全国47都道府県、試験会場は申込手続の中で選択

試験会場一覧

受験料と支払い方法

受験手数料は7,500円(税込)、支払い方式はクレジットカード、コンビニ、バウチャーから選択

受験手数料

 

試験時間

120分

試験内容

試験方法

CBT方式

出題形式

四肢択一式

出題分野

ストラテジ系:35問程度 

マネジメント系:20問程度

テクノロジ系:45問程度

受験資格

どなたでも受験可

 

ITパスポートを取得するメリット

ITパスポート取得のメリットの一つは、「ITの基礎知識を習得していること」を示すことができる点です。試験に合格するための学習を通じて、基本的なIT関連の知識が包括的に身につきます。

以下はその他のメリットです。

・ITに関する広範な知識の獲得

・企業が推奨する資格の取得

 

ITパスポート試験では、経営に不可欠な知識やマネジメント分野についても同時に学習できます。また、ITパスポートは多くの企業で推奨されている資格であり、取得することで就職・転職に有利になるでしょう。これらのメリットだけでなく、現代においてIT技術は必須のスキルとなっており、その知識を有することは今後ますます重要視されるでしょう。

 

類似する試験との違い

MOSとの違い

ITパスポートとMOSの大きな違いは、ITパスポートが「ITに関する知識」を対象としているのに対し、MOSは「Microsoft Office製品を使いこなす技術」を求めていることです。

ITパスポートには実技試験がなく、実務での有用性が低い可能性があります。しかし、経営戦略やIT管理に関する知識など、実務において役立つ知識が身につくでしょう。

一方で、MOSはWord、Excel、PowerPointなどの具体的なスキルが身につくため、資料作成やデータ集計などの実務に直結する場面で重宝されます。ただし、Microsoft Office製品に限定されるため、「IT全般の知識を習得したい」と考える方には向かないかもしれません。

 

旧初級システムアドミニストレータ試験

旧初級システムアドミニストレータ試験(以下、旧初級シスアド試験)はITパスポートの難易度を考える際に比較されることがあります。

旧初級シスアド試験はすでに廃止されていて、出題範囲の一部は基本情報技術者試験に移行され、旧初級シスアド試験の後継がITパスポートと言われています。

初級シスアドと比べて、ITパスポートの方が難易度は低く、取得しやすいと言えるでしょう。

 

 

ITパスポート試験の難易度は?

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出典:https://www.meti.go.jp/committee/sankoushin/jouhoukeizai/jinzai/pdf/report_001_00.pdf

 

ITパスポート試験の難易度を、合格率の推移、合格している人の特徴、合格基準から解説します。

 

ITパスポートの合格率の推移

公式サイトのデータをもとにITパスポート試験の過去8回の合格率の推移を表にまとめました。

 

開催

受験者数

合格者数

合格率

平成27年度

73,185

34,696

47.4

平成28年度

77,765

35,570

48.3

平成29年度

84,235

42,432

50.4

平成30年度

95,187

49,221

51.7

令和元年度

103,812

56,323

54.3

令和2年度

131,788

77,512

58.8

令和3年度

211,145

111,241

52.7

令和4年度

231,526

119,495

51.6

 

 

平均合格率

51.9

  

参照:

情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験  推移表(平成21年度春期以降)

https://www.ipa.go.jp/shiken/reports/hjuojm000000ll0f-att/suii_hyo.pdf 

統計情報(全試験区分) | 試験情報 | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構

https://www.ipa.go.jp/shiken/reports/toukei_all.html

 

データによると、直近8回のITパスポート試験では平均合格率が51.9%であり、約2人に1人が合格しています。基本情報技術者試験の合格率は31.5%、応用情報技術者試験は22.6%となっており、これらの試験と比べて比較的低い難易度であることがわかります。ただし、ITパスポート試験範囲の内容は、一般的な高校や情報学部以外の大学で学習するような内容ではなく、専門学校や大学の情報学部で学ぶ内容のため、油断はできません。

 

ITパスポート試験に合格している人の特徴

ITパスポート試験の合格率は50%前後と言われています。その内訳を見ると、社会人が約60%、学生が約40%であり、興味深いことに、学生よりも社会人の方が合格率では高い傾向があります。この理由は、試験の内容には、単にITの知識だけでなく、ビジネスや経営に関する問題も含まれているためです。その結果、実務経験のある社会人が深い知識を有しており、合格率が高くなっています。

したがって、学生がITパスポート試験に備える際には、大学や受験校で専門的な講義を受けるとよいでしょう。また、ITだけでなくビジネスや経営の基本的な知識も身につけておくと安心です。

 

ITパスポート試験の合格基準

ITパスポート試験は「IRT方式」に基づいており、解答結果から評価点を算出し、この評価点に基づき、合格・不合格が判断されます。

ITパスポート試験は総合的に1000点満点で構成されており、合格のためには600点以上を得点することが合格の条件となっています。

さらに、ITパスポートは3つの異なる分野に分かれた試験です。各分野においても1000点中300点以上を取得することが求められています。このため、試験内容をバランスよく学習し、各分野で合格点をクリアできることが合格への鍵となるでしょう。

 

参照:情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験 試験要綱 P21

https://www.ipa.go.jp/shiken/syllabus/t6hhco0000004yy7-att/youkou_ver5_2.pdf

 

 

ITパスポート試験の出題範囲

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ITパスポート試験に出題される分野は、テクノロジ系、マネジメント系、ストラテジ系の3分野があります。それぞれの出題範囲を確認しておきましょう。

 

テクノロジ系(IT技術に関する知識)

テクノロジ系では、全45問ほどが出題されます。3分野の中では問題数が一番多いので、しっかり対策をしておきましょう。テクノロジ系の出題範囲は、基礎理論、コンピュータシステム、技術要素に大きく分類され、以下のような内容が出題されます。

・基礎理論

・アルゴリズムとプログラミング

・コンピュータ構成要素

・システム構成要素

・ソフトウェア

・ハードウェア

・情報デザイン

・情報メディア

・データベース

・ネットワーク

・セキュリティ

 

参照:「ITパスポート試験シラバス」P38

https://www.ipa.go.jp/shiken/syllabus/t6hhco000000p2y8-att/syllabus_ip_ver6_2.pdf

  

マネジメント系(IT管理に関する知識)

マネジメント系は、20問ほどが出題されます。3分野の中では一番問題数が少ないですが、一つひとつの配点が高くなりますので注意してください。

マネジメント系からは、以下の範囲が出題されます。

・システム開発技術

・ソフトウェア開発管理技術

・プロジェクトマネジメント            

・サービスマネジメント   

・システム監査

 

システム開発やソフトウェア開発など技術面だけでなく、プロジェクト管理やシステム監査など、管理や監査に関する知識も押さえておきましょう。

 

参照:「ITパスポート試験シラバス」P30

https://www.ipa.go.jp/shiken/syllabus/t6hhco000000p2y8-att/syllabus_ip_ver6_2.pdf

  

ストラテジ系(経営に関する知識)

ストラテジ系は、35問ほどが出題されます。以下が出題範囲です。

・企業活動

・法務

・経営戦略            

・経営戦略マネジメント

・技術戦略マネジメント

・ビジネスインダストリ

 

ストラテジ系の領域では、企業経営に関連する包括的な知識が求められます。法務の分野では、著作権法やソフトウェアライセンスなどの知的財産権、セキュリティ関連法規など法的な側面に関する問題も出題されます。

 

参照:「ITパスポート試験シラバス」P8

https://www.ipa.go.jp/shiken/syllabus/t6hhco000000p2y8-att/syllabus_ip_ver6_2.pdf

 

 

ITパスポート取得のために必要な勉強時間

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ITパスポート取得のために何ヶ月程度勉強する必要があるでしょうか。学習方法別と事前知識量別のそれぞれの勉強時間を解説します。

 

学習方法別の勉強時間     

ITパスポートは、ITを初めて利用する人向けの入門資格であり、難易度はそれほど高くないため、独学でも十分に挑戦できます。ただし、この後で説明しますが、基礎知識がある人と初学者では異なります。一般的には、試験に合格するためには、およそ100時間〜150時間程度の勉強が必要です。

独学に不安のある初心者の方は、通信講座などを利用すると学習を効率的に進めることができます。さまざまな通信講座が提供されていますが、通常、4ヶ月の期間で合格を目指すことができるでしょう。スマートフォンを活用してWebテストに取り組むなど、スキマ時間も有効に活用できます。

 

事前知識量別の勉強時間

IT知識のない方がITパスポートの合格を目指す場合、約180時間の勉強が必要とされています。1日2時間の勉強をすると、およそ3ヶ月で合格を目指すことができます。ITの初心者にとっては、テキストに出てくる専門用語の理解から始まりますので、合格を確実にするためには余裕をもったスケジュールが重要です。

一方で、ITの基礎知識がある場合、情報系の学校に通う学生やIT系の仕事に従事している社会人などは、100時間ほどで合格を目指せるでしょう。基礎知識がある場合は、すでに知っている可能性のある情報も多いため、苦手な分野に焦点を当てて対策を行うことが重要です。

 

 

ITパスポート試験に合格するための勉強法

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ITパスポート試験合格に向けた勉強方法を2つご紹介します。

  

過去問を活用する

参考書を熟読し理解したら、次に過去問題に取り組んでみましょう。これにより、自分の苦手な分野を見つけることができます。誤答や理解不足と思われる問題については、参考書を再度読み返し、正答に達するまで何度も問題を解き直して理解を深めましょう。

ITパスポート試験の最近の出題傾向を見ると、過去問の内容に対して別のアプローチから問いかける問題が増えています。これらの問題は基本的に同じテーマに関する質問ですが、問いかけの視点が異なるため、正解が変化することがあります。そのため、過去問に丁寧に取り組むことで、出題傾向への理解を深め、合格率を向上させる効果が期待できるでしょう。この練習を繰り返すことで、理解をより深め、合格率を高めることができます。

 

専門の講義を受ける

ITパスポート試験では、独学で合格する方も多いですが、IT初心者には通信や通学講座などで専門の講義を受けることをおすすめします。

独学は自分のペースで進める利点がありますが、モチベーションを維持するのが難しいことがデメリットです。通信や通学講座の利点は、わかりやすい講義と充実した学習サポートが挙げられます。カリキュラムは、独学時に難しかった箇所をクリアしやすいように設計されています。また、厳選された参考書と問題集が提供され、試験範囲や法律の変更などの最新情報も取得しやすいことがメリットです。情報系の学部で学習されている大学生であれば、専門の講義を受けることで、ITパスポート試験の合格が容易になるでしょう。

 

 

ITパスポート試験を受験する際に注意すべきポイント

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ITパスポート試験を受ける際には、以下の2点について注意してください。

 

受験日は3~4ヶ月後を目安にする 

ITパスポート試験は、日本全国47都道府県で随時行われている試験です。手順としては、最初に受験日を決定し、それをもとに受験までの目標を設定します。特に初めて受験する場合は、受験日は3〜4ヶ月後を目安にして、試験に申し込むことがおすすめです。長期の勉強期間を設定すると、モチベーションを維持するのが難しくなるため注意が必要です。

 

CBT方式の試験について調べる

CBT(Computer Based Testing)方式は、コンピュータを利用して行われる試験形式です。受験者は試験会場に出向き、パソコン上に表示された問題に対してマウスやキーボードを使い解答します。この方式では、試験画面の表示倍率を変更したり、前後の問題に移動したりすることが可能です。CBT方式の試験がどのような形式かを事前に調べておくことをおすすめします。

 

 

まとめ

ITパスポート試験は、IT系の国家試験の入門レベルに位置し、合格率は例年50%前後であり、比較的取得しやすい国家資格とされています。しかし、合格率が高くても対策を怠ると不合格となります。IT知識がない場合、合格に必要な勉強時間は約180時間程度、基礎知識がある場合は約100時間が目安です。独学、または通学講座・通信講座などを利用して、確実に合格を目指しましょう。

 

 

参考サイト:

https://www.foresight.jp/it/column/about/

https://www3.jitec.ipa.go.jp/JitesCbt/html/reference/faq.html#qa02

https://www.tac-school.co.jp/kouza_joho/joho_ip/ip_merit.html

https://coeteco.jp/articles/13466

https://www.itpassportsiken.com/ipnanido.html

https://www.itpassportsiken.com/ipnanido.html

https://and-engineer.com/articles/YH1OIREAACMAG7Kw