コラム データサイエンティストの将来性が高い理由は?不安視する声とその原因も紹介
デジタルやITの普及によってデータサイエンティストの需要が急速に高まっています。多くの企業がデータサイエンスの重要性を実感し、これに関われる人材を求めています。また、データサイエンティストの需要の高さは、大学におけるデータサイエンティストを育成する学部が次々と開設されていることからもうかがえます。とはいえ、将来を不安視する声も少なくありません。本記事では、データサイエンティストの将来性が高い理由を確認した上で、データサイエンティストが携わる業界や年収などについても見ていきましょう。
データサイエンティストの将来性が高い理由
近年、注目されているデータサイエンティストですが、その将来性は高いといわれています。
その理由として主に以下の5つが挙げられます。
- AIを活用できる人材が求められている
- AIの活用においてビッグデータの収集・解析が不可欠
- 経験値の高いサイエンティストは希少価値が高い
- データサイエンスを学べる教育機関が増えている
- 米国において人気職種
AIを活用できる人材が求められている
社会のあらゆる領域にAIが導入されている昨今、AIを活用できる人材の需要は官民問わず高まっています。このことは、内閣府が公表した資料の内容にも明らかで、AIとデータサイエンスに対する知見があるエキスパートの教育体制の構築、産業全体の活性化の重要性に言及されています。ビックデータ収集、分析・解析などの業務に従事するデータサイエンティストは、AI開発の中でも不可欠な役割があります。
参照:統合イノベーション戦略 2023 |令和5年6月9日 閣議決定
https://www8.cao.go.jp/cstp/tougosenryaku/togo2023_honbun.pdf
AIの活用においてビッグデータの収集・解析が不可欠
人工知能の活用においてビッグデータの収集・解析は欠かせない技術となりました。人工知能の技術を活かし、社会が抱える数々の課題を解決するには学習データとなるビッグデータが必要です。データサイエンティストのようにビッグデータを正確に扱うことができる高度なスキルをもった人材が、今後の社会を支える上で不可欠になります。
経験値の高いサイエンティストは希少価値が高い
現在、IT人材は不足しており、経済産業省は「IT人材需給に関する調査レポート」の中で2030年にIT人材が約45万人不足するという試算を出しています。データサイエンティストについても同様で、現在において不足状態にあります。特に、豊富な経験があり、高い知識を取得しており、業務に意欲的なデータサイエンティストは限られています。また、少子高齢化による働き手の不足も、データサイエンティストの希少性と結びつきます。社会におけるあらゆる分野でのデータサイエンティストの需要の高まりが見込まれている昨今、経験値の高いデータサイエンティストは多くの企業にとって貴重な存在になります。
参照:IT人材需給に関する調査(概要)|平成31年4月 経済産業省
https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/jinzai/gaiyou.pdf
データサイエンスを学べる教育機関が増えている
データサイエンティストの需要の高まりを受け、国内でもデータサイエンスを学べる学部、学科、研究コースなどが次々と新設されています。例えば、国公立大学では滋賀大学が「データサイエンス学部」を開設し、さらに2019年4月に国内最初の「データサイエンス研究科」を開設。その後に、順天堂大学、京都女子大学、東海大学などが続いています。
米国において人気職種
大手求人情報検索サイト「Glassdoor」によると、米国では人気の職種として、データサイエンティストは2022年の現時点で3位にランクインするほどの人気を集めています。データサイエンティストは多くの国で高い需要を見込める他、安定した収入を得やすく、最先端の分野に携われることも人気の理由となっています。
参照:Best Jobs in America |Glassdoor
データサイエンティストの将来性を不安視する声
近年、高い注目を集めているデータサイエンティストですが、この職業の将来について不安視する声もあります。
データサイエンティストの将来性を不安視する理由として以下の5つが挙げられます。
- 研究開発費用の減少を危惧
- 人工知能による自動化
- 人員が過剰になる恐れ
- 類似職種との定義が曖昧
- 現役データアナリストの不満の意見がある
研究開発費用の減少を危惧
経済低迷により、IT業界だけでなく、ほぼ全ての業界で研究開発費用は減少傾向にあります。また、2020年の新型コロナウイルス感染拡大も研究開発費用の減少が進む原因となっています。研究開発費が十分でない場合、思うような研究・開発を実施できない他、データサイエンティストに対してスキルに見合った給与を支払うことも難しくなります。ただし、割り当てられる研究開発費は大学や研究室によっても異なるため、資金面について気になる方はよく調べて応募してみましょう。
人工知能による自動化
データサイエンティストは学習データの準備とモデル構築を主な業務としています。これらの作業が今後人工知能に今後置き換えられるのではないかと不安視する声も少なくありません。実際、モデル構築の部分は自動化が進んでおり、学習データの準備でもIoTのセンシングデバイスなどを活用する企業が増えています。しかし、データサイエンティストが培ってきたノウハウは今後も求められる他、人間にしか携われない分野もあります。そのため、幅広い業務に対応できるようスキルを磨いておくことをおすすめします。
人員が過剰になる恐れ
データサイエンティストは人気の職業で、近年において各大学で新設学部が次々と設置されています。そうしたことからも、人員が過剰になるのではないかという恐れを抱く人も少なくありません。また、自動化の台頭によるデータサイエンティストの人員削減も懸念されています。しかし、各企業におけるデータサイエンスの需要は年々増加している他、どのデータを使い、社会にどのような価値を提供するかといった仕組みのデザインは、人間の手でしかできないことでしょう。
類似職種との定義が曖昧
データサイエンティストと類似する職業としてデータエンジニアやデータアナリストが挙げられます。これらの職業とデータサイエンティストの業務領域は曖昧で、業務の中で重なる部分もあります。そのため、将来的にはデータサイエンティストから別の名称が変わることもあるかもしれません。しかし、名称が変わったとしても、各企業がデータサイエンティストに求めてきたことが変わるわけではありません。
現役データアナリストの不満の意見がある
現役データアナリストの中には少なからず不満の意見が挙がっています。例えば、「取得したスキルを活用できていない」「欠損値や外れ値などの不正確なデータ修正が大変」などといった意見があります。しかし、いずれの職業においても不満の意見が従業員から出ることもあるため、データアナリスト特有のことではありません。
データサイエンティストの仕事内容を紹介
データサイエンティストとは大量のデータを解析し、新しい発見や有効な情報を得る職業です。また、データサイエンティストには経営者などの意思決定者がデータに基づいた客観的判断を行えるようサポートする役割もあります。
データサイエンティストに求められるスキル・資格・勉強方法とは?
データサイエンティストとして働くにあたって、どのようなスキル・資格が求められるのか疑問に思っている方が多いと見受けられます。あるいは、その勉強方法が分からないという方も多いのではないでしょうか。
以下では、データサイエンティストに求められるスキル・資格・勉強方法について分かりやすく解説しています。
関連リンク:
データサイエンティストになるための勉強方法は?独学で学べる?必要なスキルも紹介
https://www.juntendo.ac.jp/academics/faculty/hds/folder/8/
データサイエンティストとして個人の価値を高める方法
データサイエンティストとして個人としての価値を高める方法として以下の6つが挙げられます。
- 国内外の論文を積極的に読む
- 学会に足を運ぶ
- 情報発信や共有の場に参加する
- 学んだことを実務に活かす
- AIスキルを身に付ける
- クラウド環境下でのスキルを習得する
国内外の論文を積極的に読む
査読にパスした論文しか学会誌に掲載されないため、論文は内容の信ぴょう性が保証されています。また、論文には複雑な論理や最新の研究成果などが含まれています。そのため、論文を読むことで、ネット上の情報では得られないような深い内容の情報をインプットできます。国内の論文検索には国立情報研究所が提供しているCiNii Articlesがおすすめです。また、海外の論文を検索する際にはGoogle Scholarをおすすめできます。
CiNii Research
Google Scholar
https://scholar.google.co.jp/schhp?hl=ja
学会に足を運ぶ
学会にはその分野のプロフェッショナルが集まるため、精度が高い情報や最新の情報について話題になる機会も多いです。また、論文は学会で発表された後に公開されるという流れが一般的ですので、最新の情報をいち早く得たい方にもおすすめできます。多くの学会では交流会も開催されており、参加することで同業者と人間関係を構築することもできます。
情報発信や共有の場に参加する
近年、SNSやオンラインプラットフォームなど、同業者間で情報を共有し合える場が増えています。情報発信や共有の場に参加することで新しい情報を入手できたり、自分の知識を強固にできたります。また、同業社間での横のつながりもできるので、何かあった際に相談にのってもらえるようになることもあるでしょう。
学んだことを実務に活かす
学んだことを実務に活かさないのはもったいないことです。また、学びの内容を実務に活かすことでよりしっかりと記憶できます。机上で学んだことを実務に活かさなければ、記憶はそのうち薄れていくでしょう。
AIスキルを身に付ける
AIスキルはデータ分析や業務効率化において不可欠なものです。今後、AIが使用される機会はますます増えると見込まれているため、AIスキルを持つデータサイエンティストになれれば多くの仕事を割り当ててもらえる可能性があります。AIの動向を常に把握し、自分の業務に取り入れていく姿勢が求められます。
クラウド環境下でのスキルを習得する
近年、多くの企業がクラウドに移行しています。データサイエンティストにはデータ分析を行い、企業にビジネスに関する提案を行う役割がありますので、企業のシステムに対応できなければなりません。データサイエンティストが業務を行うためにはクラウド環境での実務スキルに加えて、クラウドを抵抗なく使えることが前提となります。
データサイエンティストが活躍できる業界は多岐にわたる
データサイエンティストが活躍する領域はIT業界にとどまりません。
データサイエンティストが活躍できる領域として以下の7つの領域が挙げられます。
- 金融
- 不動産
- IT
- 製造
- 広告
- コンサルティング
- 官公庁
1.金融
金融ではさまざまな部分にAIやビッグデータが導入されています。例えば、ローンや融資の審査においても利用されています。また、クレジットカードの不正検知やセキュリティ対策にもデジタルの力が役立っています。さらに、近年広がっている窓口業務の無人化においてもビッグデータを応用したAIは欠かすことができません。
2.不動産
不動産では住宅価格指数などの分析を行っています。また、分析データをもとに事業について検討するため、データサイエンティストの技術も必要とされています。高い費用対効果を期待できるエリアの検討やアプローチを行う客層の検討などにもAIは重要な役割を果たしています。大手不動産会社の中には自社で開発したシステムを活用し、データ収集・分析などを行っている企業も多いです。
3.IT
IT業界ではシステム開発や作業の効率化などを目指し、その基盤となる開発をデータサイエンティストが担っています。また、多くのシステム開発会社ではAIやビッグデータに関する開発案件の受注数が増えているため、こうした業務に対応できるデータサイエンティストの需要がますます高まっています。
4.製造
製造の現場では機械化がすでに進んでおり、多くの工場では生産ロボットを稼働させ、製造を自動化しています。しかし、生産ロボットが故障などで停止した場合、生産が停止し、取引先に多大なる迷惑がかかります。そうした中で、スマートファクトリーというAIの活用事例が注目されています。これは、AIが温度の変化や生産ラインの異音などから故障を予見するものです。ただし、こうした事例を活用するには高度な知見が必要となるため、データサイエンティストの力が不可欠となります。
5.広告
広告業界ではデータをもとにした事業展開を進めていくための基盤構築が不可欠です。この基盤の構築にはデータサイエンティストの存在が求められます。データサイエンティストは広告効果が見込まれる場所や依頼などについて膨大な統計を分析し、広告マーケティングを支えています。近年ではネット上に展開されているデジタル広告のニーズも高まっていますので、データサイエンティストの活躍の場は今後さらに増えると見込まれます。
6.コンサルティング
コンサルティングではデータサイエンティストによって顧客データを管理し、行動分析を行います。そして、クライアントにはそれらの結果を踏まえてプランなどを提供します。コンサルティングがクライアントにプランを提供する際には証拠としてのデータが必要ですが、このときにデータサイエンティストが分析した科学的な根拠が役立ちます。
7.官公庁
官公庁では都市計画の策定や将来的な人材不足予想を行う際に大規模データを用いた分析を実施していきます。官公庁の分析結果は個人にも企業にも大きなインパクトを与えるため、正しいものであることが前提となります。他の分野よりも高い正確性が求められるため、責任も重くなります。
データサイエンティストの年収は?
出典:データサイエンティストの仕事の平均年収は698万円/平均時給は1,102円!給料ナビで詳しく紹介|求人ボックス
※2023年12月1日時点
求人ボックスの求人情報においては、データサイエンティストの年収は600万~800万円ががボリュームゾーンとなっています。日本の平均年収が450万円前後であることを考慮すると、データサイエンティストの年収は高いといえます。
また、glasdoorの50 best job in America for 2022によると、アメリカにおける2022年のデータサイエンティストの平均年収12万ドル、日本円換算で約1,750万円(※)です。ただし、アメリカは日本よりも物価が高いため、アメリカでデータサイエンティストとして働けば日本よりも高い生活水準が保証されるわけではありませんので注意しましょう。
※2023年12月時点で日本円換算した場合
参照:
令和3年分 民間給与実態統計調査|国税庁
https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/minkan/gaiyou/2021.htm
Best Jobs in America | Glassdoor
https://www.glassdoor.com/List/Best-Jobs-in-America-LST_KQ0,20.htm
関連リンク:データサイエンティストの年収は?年収を左右する要因や上げる方法を紹介
https://www.juntendo.ac.jp/academics/faculty/hds/folder/5/
データサイエンティストを目指すなら“順天堂大学”
データサイエンティストを目指す方には順天堂大学の「健康データサイエンス学部」がおすすめです。
本学部では1、2年次には数理統計やコンピュータサイエンスなどといったデータ分析の基礎に加え、健康、医療、スポーツ領域の基礎知識を学びます。そして、3、4年次には本学附属病院や連携企業でのインターンシップに参加し、実践的に学習し、応用スキルを取得していきます。
また、教員は各分野で活躍するプロフェッショナルで、国内外から招かれています。外国人の教員も在籍しているため、グローバルな視点を身に付けることもできます。
同大学は千葉県の浦安市に所在しているため、都心部からのアクセスが良好である他、落ち着いた雰囲気の中で学べます。
健康データサイエンス学部|順天堂大学 資料請求|順天堂大学健康データサイエンス学部 お問い合わせ|順天堂大学健康データサイエンス学部https://www.juntendo.ac.jp/academics/faculty/hds/contact/contact/ |
まとめ
データサイエンティストは将来性が高いことで知られているものの、それでも将来を不安視する声もあります。しかし、データサイエンティストのニーズの高さは一時的なものではなく、今後もニーズが安定すると考えられます。
デジタルやAIの普及に加え、今後はそれらがより多くの分野に導入されると見込まれているからです。そうした中で、データサイエンティストの仕事がなくなることはないでしょう。
参考URL
https://career.levtech.jp/guide/knowhow/article/799/
https://www.glassdoor.com/List/Best-Jobs-in-America-LST_KQ0,20.htm
https://itvolante.jp/column/579/
https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/jinzai/houkokusyo.pdf