就職・キャリア 薬剤師インタビュー 青嶋 瑞樹さん

pha_web_aoshima_photo_1

データを読み解き、最適な一手を導く。
感染症領域で医療を支える薬剤師。

順天堂医院
薬剤部/抗菌薬適正使用支援チーム(AST)
青嶋 瑞樹さん

薬剤師の仕事は、患者さんと直接話すことだけではありません。日本を代表する大学病院・順天堂医院で、青嶋瑞樹さんは抗菌薬適正使用支援チーム(AST)の薬剤師として、細菌による感染症の治療を薬学の視点から支えています。カルテに記された臨床情報と微生物検査室の検体・培養結果を読み合わせ、医師・検査技師・看護師と知恵を持ち寄って、最適な薬物療法を組み立てていく―その仕事には、薬剤師という職業のもう一つの顔があります。

Interview MOVIE

カルテと検体の情報から、患者さんを多面的に捉える

抗菌薬適正使用支援チーム(AST)の薬剤師として、細菌による感染症の治療を薬学の視点から支えています。患者さんと直接お話しする機会は多くありませんが、カルテに記載された病歴や手術歴、検査データに加え、微生物検査室で培養結果や検体の情報も確認しながら、患者さんの状態を多面的に捉えることを大切にしています。
たとえば、本来は体内にいないはずの血液の中から細菌が検出された―そんな知らせが届くと、すぐに動きます。それは全身に菌がめぐっている重症な状態で、治療の遅れがそのまま命に関わる場面だからです。培養で特定された菌の情報と、画像や血液検査の所見、患者さんの治療経過を一つひとつ突き合わせて、その菌に効く薬の中から、感染している部位にきちんと届くもの、体への負担がなるべく少ないものを選んでいきます。さらに、患者さんの腎臓の機能に合わせて薬の量を細かく調整し、血液中の薬の濃度を測りながら効果を確かめていく。一つの症例に対して、いくつものデータを読み解きながら最善の治療を組み立てる―この積み重ねが、AST薬剤師の日常です。

pha_web_aoshima_photo_2
順天堂大学医学部附属順天堂医院

4つの専門が交わる場所で、最適な一手を導く

毎日の業務では、感染症専門の医師、微生物検査を担当する検査技師、看護師と連携しながら、患者さんの治療状況を確認し、意見を交わします。微生物検査の結果や画像所見、患者さんの状態などを多職種で共有しながら、それぞれの専門的な視点を持ち寄って治療方針を検討する。そこに薬の専門家として、どの薬が効くか、感染した部位にきちんと届くか、体への負担が少ないかといった視点から提案を加える。4つの専門性が一つのテーブルですり合わさり、ひとつの治療方針へとまとまっていく―そこに、ASTという仕事の核があります。
大切にしているのは、自分の考えを一方的に押しつけるのではなく、それぞれの専門的な意見をすり合わせること。感染症は状態が複雑で、正解が一つとは限りません。教科書通りに進まないケースのほうがむしろ多いと言ってもいいかもしれません。だからこそ、チームで出し合った知恵が一つの治療方針にまとまり、それが患者さんにそのまま届いて、実際に回復へ向かっていく過程を追えることが、この仕事のいちばんの手応えです。
医師への提案も、データやエビデンスを示しながら対等にディスカッションすることを心がけています。「この菌に対しては、こちらの薬のほうが感染部位に届きやすいのではないでしょうか」「腎機能を考えると、用量は少し慎重に設定したほうがよいかもしれません」
―一方的な指摘ではなく、根拠を共有して一緒に考える提案として伝える。そう伝えるためには、自分自身がそれを語れるだけの根拠を持っていなければなりません。薬剤師は「薬の専門家」として、チームの議論を前に進める役割を担っている。感染症領域で働くなかで、その手応えを日々感じています。

pha_web_aoshima_photo_3

研究室での学びが、いまの仕事の原点に

大学時代、微生物を顕微鏡で観察していた研究室での日々が、今の仕事のすべての原点になっています。目に見えないほど小さな菌が、人の体の中でどう振る舞い、どう薬と反応するのか―その面白さに惹かれて、感染症の世界に飛び込みました。
入職後、感染症領域で活躍する先輩薬剤師の姿に出会い、「自分もこういう薬剤師になりたい」と素直に思えたことが、ASTへの道を選んだいちばんの理由です。現場に出るほどに、薬剤耐性菌の問題、新興感染症への備えなど、社会全体で考えるべきテーマと自分の仕事が地続きであることを実感します。一人の患者さんを治療することが、結果として地域の医療や次の世代の治療環境を守ることにつながっている―そう感じられる仕事は、そう多くありません。
臨床と研究を循環させられるのも、順天堂で働く面白さのひとつです。日々の診療で見えてきたデータや疑問を、研究としてまとめて学会で発表し、論文にする。その成果が、また次の治療に還元されていく。ガイドラインにまだ載っていない新しい薬の使い方を、安全性をきちんと検証したうえで臨床に活かせるのも、研究と臨床が結びついた環境ならではです。学びと実践がつながっていることを、これほど強く感じられる職場は、そう多くないと思います。

「なぜこの治療なのか」を考える力を、学生時代から

薬剤師は薬を扱うだけでなく、患者さんの治療に深く関わる仕事です。患者さんに直接接する場面でも、私のようにカルテや検査データの向こう側から支える場面でも、共通して問われているのは「なぜこの薬で、なぜこの量で、なぜいま使うのか」を自分の言葉で説明できるかどうか。多職種と連携しながら、薬の知識をチーム全体に届ける―そんな橋渡しの存在になることが、これからの薬剤師に求められていると感じています。
そのためには、暗記ではなく、理由から考える習慣を、学生時代から大切に育ててほしいと思います。授業で出てきた薬を「効くから使う」で終わらせずに、なぜ効くのか、ほかの選択肢ではなぜダメなのか、副作用が起きたらどう対応するのか―その問いに自分なりの答えを持てるようになると、現場に出てからの伸びがまったく違ってきます。
そして、一緒に働く仲間との出会いも、薬剤師人生を大きく左右します。「こんな薬剤師になりたい」と思える先輩や、互いに刺激し合える同期に出会えるかどうか。順天堂には、その出会いがあります。

pha_web_aoshima_photo_4
青嶋 瑞樹さん