就職・キャリア 薬剤師インタビュー 大谷 拓也 さん

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そばにいること、声を聴くこと。
その先に、薬剤師だからできる医療がある。

順天堂大学医学部附属浦安病院
薬剤科/緩和認定薬剤師
大谷 拓也さん

「薬を届ける」だけでは、痛みは癒せない。がんと向き合う患者さんの、体の痛み、心のつらさ、これからを生きる不安。その一つひとつに、薬学の視点から応えていくのが緩和認定薬剤師の仕事です。日本の救急医療の最前線、順天堂大学医学部附属浦安病院で、大谷拓也さんは多職種チームの一員として、患者さんのいちばん近くに立ち続けています。

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チームで、患者さんの「いま」に向き合う

緩和認定薬剤師は、がんなどの病気に伴う痛みやつらさを抱える患者さんに対し、薬の専門知識を活かして症状をやわらげる役割を担っています。
一日は、病棟の看護師からの一本の連絡から動き出すこともあります。看護師が日々の関わりの中で「この患者さんにはケアが必要だ」と判断したとき、緩和ケアチームに依頼が届く。そこから医師・看護師・薬剤師・栄養士が一緒に患者さんのもとを訪れ、その方が抱えている問題を多角的に把握していきます。体の痛み、心のつらさ、がんと告げられてどうしたらいいかわからないという不安、家族や仕事に関する悩み―そうした一つひとつの声に耳を傾け、何ができるかをチームで考えて、ひとつずつ手立てを打っていく。
浦安病院は785床の規模を持ち、三次救急や災害医療の最前線でもある総合病院です。
緩和ケアの仕事と並行して、がん治療センターでの業務や、外来通院中の患者さんと向き合う「薬剤師外来」も担当しています。入院中だけでなく、退院してからも続く治療の中で、薬剤師として何を支えられるか―その視点で日々の業務に向き合っています。

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順天堂大学医学部附属浦安病院

何度でも、言葉を重ねる

痛みをコントロールする治療では、標準的な指針(ガイドライン)を基本としながらも、思うように症状が改善しないことも少なくありません。そうしたときは、最新の研究成果や論文に当たって、新しい選択肢を探します。多職種のメンバーと議論を交わしながら、ガイドラインの先にある最善の方法を一緒に組み立てていく。正解が一つに決まっていない領域だからこそ、薬学の知識を頼りに考え抜く時間が、この仕事のいちばんの面白さでもあります。
痛みを抑える薬に対して、「副作用が怖い」「依存してしまうのでは」という不安から、使うことをためらう患者さんも少なくありません。そうした方には何度も病室を訪ね、薬の効き方や副作用への対処を、納得していただけるまで丁寧に説明し続けます。一度では伝わらないことも、二度、三度と顔を合わせるうちに、少しずつ言葉が届きはじめる。
「あなたがそこまで話してくれるなら、信頼して使ってみるよ」―その一言とともに治療が前に進み、表情が少し和らぐ瞬間があります。痛みがやわらいだ、夜眠れるようになった、家族と穏やかな時間を過ごせるようになった。検査の数字ではない、その人の暮らしのなかでの小さな変化に立ち会えたとき、この仕事を選んでよかったと心から思います。
薬の知識だけではなく、患者さんの暮らしや気持ちを理解し、チームでそれぞれの視点を持ち寄りながら支えていく。緩和医療における薬剤師の役割は、検査値や処方箋の向こうにある「その人らしさ」を守ること―現場に立つたびに、そう実感しています。

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ジェネラリストだからこそ、深められる専門性

緩和ケアと向き合っていると、薬剤師という仕事の幅の広さを改めて感じます。痛み止め、吐き気止め、不眠への対応、栄養や排泄を整える薬、心の負担を和らげる薬― 一人の患者さんに必要な薬は、診療科をまたいで何種類にもおよびます。薬剤師は、診療科を超えてさまざまな薬を扱える「ジェネラリスト」。その広い視野を土台に、緩和ケアという領域でさらに専門性を深めていく。これが、薬剤師という職業の強みだと思っています。
病棟の看護師との連携も、緩和ケアの質を支える大きな柱です。状態が変わりやすい患者さんほど、リアルタイムでの情報のやりとりが大切になります。看護師が拾った小さなサインを薬剤師が受け取り、必要に応じて医師に提案し、その日のうちに処方を変えていく。
一人では決して成り立たない仕事だからこそ、チームの中で薬剤師がどう動けるかが問われていると感じています。

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学ぶ環境が、医療人を育てる

順天堂には6つの附属病院があり、それぞれが異なる専門性を持っています。救急医療、がん診療、地域医療、高齢者医療、精神医療―どれかひとつの色に染まらず、医療の全体像に触れられること。これは私学では類を見ない学びの環境だと思います。学生時代の実習で多様な現場に触れられること自体が、進路選択や薬剤師としての姿勢の土台になるはずです。
知識や技術はもちろん大切ですが、それ以上に、「患者さんのために自分に何ができるか」を考える姿勢を、学生時代から実習を通して身につけてほしいと思います。最初は何もできなくて当たり前。でも、患者さんの一言が、自分を成長させてくれる。「ありがとう」と言われた経験、逆に何もできず無力さを感じた経験―そんな一つひとつの記憶が、薬剤師として立つときの礎になります。
薬剤師として働くなかで、迷うことも、悩むこともたくさんあります。それでも、自分が関わったことで誰かの一日が少し穏やかになる―そう感じられる瞬間が、必ずあります。その手応えを、ぜひ順天堂の学びの中で見つけてください。

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大谷 拓也 さん