教員紹介 教員インタビュー 畦地 拓哉 先生

臨床薬学教育センター 畦地 拓哉 先生

臨床薬学教育センター 畦地 拓哉 先生

少子高齢化が進む日本では、「薬を出す」だけの薬剤師では不十分になりつつある。畦地先生は、薬剤師が高齢者ケアや地域医療にどう貢献できるかを、科学的に探究する研究者であり、教育者です。

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薬局から地域へ、患者支援の最前線を支える

畦地先生が着目するのは、薬局を拠点とした健康支援です。特に「フレイル(加齢による虚弱状態)」の早期発見・予防に薬剤師が関与することにより、要介護化を防ぐ可能性があるといいます。
「日常的に接する薬剤師だからこそ、患者さんのちょっとした変化に気づけます。『最近ふらつくようになった』『食欲がない』といった微細なサインを拾い、必要に応じて医師や介護職とつなぐ。それができる薬剤師が、これからの地域医療には必要なんです」

臨床薬学教育センター 畦地 拓哉 先生
畦地先生

科学的視点で“薬剤師の働き”を可視化する

こうした取り組みを根拠づけるため、畦地先生は「薬剤師の介入がどのようなアウトカム(結果)につながるのか」を調査・分析する研究を行っています。実際の薬局業務に同行し、患者とのやりとりを定性的・定量的に記録・分析することで、「薬剤師の価値」を明らかにしようとしています。
「薬剤師の行動をデータで示すことで、医療職間の役割分担が明確になります。多職種連携を “属人的な関係” ではなく、“再現可能なチーム” に変えていく鍵が、エビデンスに基づく教育と制度設計にあると考えています」

教育者として、医療の“リアル”を伝えたい

研究成果は、薬剤師教育にも還元されています。たとえば「服薬指導の練習」だけでなく、「患者さんの生活背景を読み取る力」を育てる授業を重視。1年次の看護体験や、地域薬局でのフィールド実習などを通じて、学生が早期に現場に触れ、医療の本質を実感する構成になっています。
「講義の中で “患者さんって誰?” と聞くと、はじめは戸惑う学生も多い。でも、それを一緒に考えることが、薬剤師としての責任感を育てる第一歩なんです」
薬剤師の仕事を科学的に分析し、教育と実践に橋渡しする。現場を知る研究者として、畦地先生はこれからも、“人に寄り添う力” のエビンスを積み重ねていきます。