教員紹介 教員インタビュー 南 彰 先生

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見えなかった酵素のはたらきを見える化し、未来の医療を切り拓く

大学院 薬学研究科 薬効機能解析学分野
薬学部
機能形態学分野
南 彰 先生

認知症、糖尿病、皮膚の老化。一見バラバラに見える現象の裏側に、共通の「鍵」があるとしたら―。南先生が専門とするのは、私たちの細胞表面に存在する「糖鎖(とうさ)」と呼ばれる構造の機能解明と、それを応用した創薬研究。糖鎖を分解する酵素の働きを「見える化」する独自の蛍光プローブを開発し、生命現象の解明や創薬に挑んでいます。

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「見えなかった糖鎖分解酵素の働き」を、観察可能にする

私たちの体を構成するすべての細胞は、その表面が「糖鎖」と呼ばれる構造で覆われています。糖の分子が鎖のようにつながったこの構造は、細胞同士のコミュニケーションや、外界からの情報を受け取る際の調整役として、生命活動の根幹を支えています。「糖鎖は、教科書では細胞表面にまばらに描かれることが多いのですが、実際には表面を覆い尽くすほど密に存在しています。中でも私たちが注目しているのが、糖鎖の一番末端に結合している『シアル酸』という糖の分子と、それを糖鎖から切り離す『シアリダーゼ』という酵素です」
南先生たちの研究チームは、このシアリダーゼの働きをリアルタイムで観察できる蛍光プローブを開発しました。生きた細胞や組織のなかで、酵素がいつ、どこで、どれくらい働いているのか―これまで「想像するしかなかった現象」を、目に見えるかたちで捉えられるようになったのです。「研究の出発点には、いつも『見たい』という気持ちがあります。
見えないものを見えるようにするための道具を、自分たちの手で作る。そこから新しい発見が次々と立ち上がってきます」

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認知症、糖尿病、肌の老化―糖鎖がつなぐ、医療の最前線

南先生たちが開発した蛍光プローブで、脳、膵臓、皮膚、筋肉……さまざまな臓器を一つひとつ調べていくと、想像を超える発見が次々と現れました。「脳の中では、神経活動が高まった瞬間に、細胞表面のシアリダーゼが秒オーダーで活性化することがわかりました。シアル酸が外れることで細胞表面の電気的な状態が変わり、それが記憶の形成に深く関わっている可能性が見えてきました」
膵臓では、インスリンを分泌するランゲルハンス島という部位に強いシアリダーゼ活性があることを発見。シアリダーゼ阻害剤を加えるとインスリンが大量に分泌されたことから、糖尿病の新たな治療薬としての応用可能性が広がっています。
皮膚では別の側面が見えてきました。「皮膚のシアリダーゼは加齢に伴って活性が低下していくことがわかってきました。この知見を応用することで、年を重ねても若々しい肌を保つアプローチが見えてきています」
認知症、糖尿病、皮膚の老化、サルコペニア。一見バラバラに見える現象の裏側に、「糖鎖」と「シアリダーゼ」という共通の鍵がある。基礎研究の発見が、臨床応用へとつながっていく―その手応えを、南先生は日々感じています。

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答えのない問いに、学生と共に挑む

研究を進めるうえで南先生が大切にしているのが、「研究テーマは、教員だけのものではない」という姿勢です。「私の研究室では、学生のアイデアから生まれた研究テーマが、いくつもあります。実習では答えがすでに分かっているテーマに取り組みますが、研究は違います。教員もまだ答えを知らない。だからこそ、学生も教員も対等に議論できる場になります」
順天堂大学薬学部は2024年に開設されたばかり。全国から多様な分野の研究者が集まり、活発な共同研究が日々生まれています。さらに医学部との連携によって、基礎研究で見つけた知見を臨床の現場へとつなげていきやすい環境が整っています。「『なぜ?』と問い続ける姿勢こそが、研究の出発点です。3年後期から始まる研究室での学びでは、それまで身につけた知識が、新しい発見のための道具として一気につながっていく感覚を、ぜひ体験してほしいと思います」

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南先生
研究コラム:肌のハリを取り戻す、糖鎖からのアプローチ

加齢に伴って肌がたるみ、弾力を失っていく―この現象の背後にも、糖鎖が深く関わっています。肌の弾力を支えるのは、皮膚の真皮層に存在する「エラスチン」という線維状のタンパク質です。エラスチンが豊富にあれば肌は弾力を保ち、減少するとたるみが進行します。糖鎖からシアル酸を切り離す「シアリダーゼ」は、このエラスチンの生成を促進します。南先生たちの研究で明らかになってきたのは、「皮膚のシアリダーゼ活性は、加齢に伴って大きく低下していくという事実でした。「つまり年齢を重ねるほど、エラスチンが作られにくくなり、肌がたるんでいく。この仕組みを逆手に取れば、シアリダーゼ活性を回復させる成分を見つけることで、肌のハリを取り戻すアプローチが可能になります」
現在、この知見をもとに、企業との共同研究が進んでいます。基礎研究で得た発見が、企業の製品開発と結びつき、人々の生活の質を変えていく―糖鎖研究が拓く、産学連携の最前線です。