教員紹介 教員インタビュー 高島 由季 先生

高島 由季 先生

薬を“届ける”技術を探究し、未来の医療に貢献する

創薬科学領域 創剤学分野
高島 由季 先生

「薬が効く」ためには、病気に“届く”仕組みが必要です―。高島先生が専門とするのは、薬の有効成分を体内の必要な場所に効率よく届ける「製剤設計」や「薬物送達(そうたつ)」に関する研究。服用した薬がどのように吸収され、狙った部位で効果を発揮するのか、その裏にある“しくみ”を日々探究しています。

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「水に溶けない薬」を“使える薬”に変える

近年、創薬研究の進展により、新薬候補の多くが「水に溶けにくい」性質を持つようになりました。服用しても体内に吸収されにくいため、薬として成立させるためには“どう溶かすか”、“どう届けるか”を工夫する必要があります。
「たとえば抗がん剤などは、治療効果と副作用のバランスをとりながら、有効成分を標的部位に集中させる必要があります。私たちは“固体分散体”と呼ばれる技術を使い、難溶性薬物をナノレベルで分散させて溶解性を高める製剤を設計しています。さらに、これを徐放性(じょほうせい)製剤として体内でゆっくり放出させることで、副作用を抑えながら効果を持続させる工夫も加えています」
このような製剤設計技術は、単に服薬のしやすさを追求するだけではなく、患者の治療満足度や生活の質(QOL)向上にも大きく寄与するものです。

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薬の“かたち” から臨床の課題を解決する

高島先生の研究室では、点眼薬や経口薬だけでなく、経皮吸収製剤やマイクロニードル型製剤など、さまざまなドラッグデリバリーの手法も探究されています。これらは、注射のような侵襲性の高い投与法を回避し、持続的かつ局所的に薬効を届けるための新しい手段です。
「医学部の先生や順天堂醫院との共同研究では、実際の臨床現場から“こういう薬があったらいいのに”という声をいただくことがあります。それを出発点として、どういう製剤なら可能か、どうすれば体内動態をコントロールできるかを設計していく。医療ニーズに応える基礎研究としての意義を強く感じています」
こうした研究は、薬学の専門性を“かたち”にして臨床と結びつける橋渡しであり、順天堂大学の学際的な研究環境がその実現を後押ししています。

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高島先生

学生とともに、問いを育てる

研究は一朝一夕では成果が出ません。高島先生は「仮説を立てて検証し、またやり直す」という地道な積み重ねが、科学者としての基礎体力を育てると話します。
「製剤研究は“ものづくり”である一方、“患者さんのため”という明確なゴールがある分野です。学生には、自分の工夫がどこで役に立つのか、どんな課題を解決できるのかを常に意識してもらっています」
現在は、薬学部の卒業研究に加え、大学院生やポスドクも含めた研究チームとして、創薬研究の幅広いテーマに取り組んでいます。
「一緒に試行錯誤を重ねながら、少しずつでも確実に、未来の医療を良くする技術を形にしていきたい。それが私の研究室の使命です」



研究コラム:点眼薬の可能性を広げる「見えない工夫」

目の病気に対する治療では、現在でも眼球への注射が必要なケースがあります。たとえば加齢黄斑変性や網膜疾患などの治療で使われる抗VEGF薬は、眼内注射によって網膜の奥深くまで薬を届ける必要があります。
「こうした侵襲的な治療を回避できれば、患者さんの負担は大きく軽減されます。そこで私たちは、点眼薬によって同様の効果を得られる可能性を探る研究に取り組んでいます」
高島先生の研究では、点眼薬の有効成分が角膜や強膜を通じて、眼球内部にどこまで浸透できるかを細胞レベル・組織レベルで評価。ナノ粒子製剤やバイオアベイラビリティ改善技術を駆使して、網膜への到達性を高める工夫を行っています。
「単に“しみない目薬”ではなく、“患部に届く目薬”をつくる。そこに、製剤研究の面白さと可能性が詰まっています」
こうした点眼薬開発の研究は、特に高齢患者や継続治療が必要な方にとって、治療選択肢を広げる革新的な一歩となることが期待されています。