研究・分野紹介 医薬品適用学

医薬品の力を、最適なかたちで患者へ
― 製剤化技術とDDSを基盤とした次世代医薬品創製研究 ―

分野概要

医薬品は、有効成分そのものではなく、最適な投与形態へと製剤化されてはじめて十分な効果を発揮します。有効性・安全性・品質を保証し、有効成分の性能を最大限に引き出す製剤化技術は、医薬品創製において極めて重要な工程であり、近年大きく進展しています。
本分野では、製剤設計の方法論と実践、新たな薬物送達(Drug Delivery System;DDS)技術の構築を柱として、難溶性低分子薬の製剤化から中分子サイズの核酸医薬、さらには遺伝子治療・核酸ワクチンの創製まで、次世代医薬品開発に資する研究を展開しています。
これらの研究を通じて、大学院生は最先端の製剤化技術とDDS技術を体系的に学び、医薬品開発に必要な実践的研究能力を修得することができます。

教員紹介

研究概要

私たちが服用する薬や注射薬は、有効成分そのままの形では体内で十分に働くことができません。体内には、消化管、皮膚、血液脳関門、血液網膜関門など、薬の移動を妨げるさまざまな「バリア」が存在するためです。そのため医薬品開発では、「どのように薬を体内に送り込み、どこへ届け、どのように効果を発揮させるか」を考え、有効成分の性質を理解したうえで、製剤化技術と薬物送達技術(Drug Delivery System;DDS)を組み合わせた製剤設計が不可欠となります。また、単に投与可能な形態に仕上げるだけでなく、その有効性・高品質・安全性をいかに保証するかも重要な課題です。

本分野では、未だ治療が困難な難治性疾患や慢性疾患の克服を目指し、難溶性低分子薬から核酸・遺伝子を基盤とする医薬品までを対象とした製剤化研究を行っています。特に、患者さんのQOL(Quality of Life)を重視し、より効果的で副作用が少なく、身体への負担が小さい製剤の創製を目標としています。

◎研究の柱は以下の3点です。

  • 製剤化による最適な投与形態の設計と有効性評価
  • 製剤設計に関する方法論の確立とその実践
  • 新たな薬物送達(Drug Delivery System;DDS)技術の構築

これらを基盤として、ナノ粒子化技術や新規材料を活用した最先端の製剤設計を展開しています。

研究テーマ
1. 難治性疾患治療に向けた新規DDS製剤の開発
2. がん・感染症に対する核酸ワクチンおよび遺伝子治療製剤の開発
3. 難水溶性薬物の溶解性・吸収性を改善する経口投与製剤の開発
4. 分子複合体化による医薬品原薬の物性改善
1.難治性疾患治療に向けた新規DDS製剤の開発

核酸医薬(siRNA、mRNA、アプタマー、pDNA など)は、遺伝子レベルで病因タンパク質の発現を制御できる革新的な医薬品です。しかし、体内で不安定であるため、効果的な送達技術が不可欠です。本研究では、体内の様々なバリア機能を如何にして突破し、標的とする部位に薬物を送り届けることができるのかを考え、核酸医薬等の送達効率および治療効果を引き出す適切な脂質ナノ粒子(LNP)やリポソームなどのナノ粒子を設計し、網膜疾患、神経変性疾患、炎症性腸疾患、皮膚疾患、がんなどを対象としたDDS製剤の開発を進めています。さらに、iPS細胞由来オルガノイドや3Dイメージング解析を用いた薬効・安全性評価にも取り組んでいます。

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2.がん・感染症に対する核酸ワクチンおよび遺伝子治療製剤の開発

mRNAワクチンの実用化により、核酸医薬は新たな創薬モダリティとして注目されています。また、プラスミドDNA (pDNA)を標的細胞に送達し、目的タンパク質を生成させることでワクチン効果を期待できます。本研究では、核酸やpDNAを安定に保護し、標的細胞や特定臓器(肝臓、肺など)へ選択的に送達する新規ナノキャリアの構築を通じて、がんや感染症に対する核酸ワクチン、遺伝子治療用製剤の創製を目指しています。

3.難水溶性薬物の溶解性・吸収性を改善する経口投与製剤の開発

多くの新薬候補化合物は水に溶けにくく、経口投与しても十分に吸収されないという課題を抱えています。本研究では、ナノ粒子化技術やイオン液体を活用し、難溶性薬物の溶解性・吸収性を飛躍的に向上させる新しい経口製剤化手法の確立に取り組んでいます。

4.分子複合体化による医薬品原薬の物性改善

医薬品原薬が抱える溶解性や安定性の問題に対し、有効成分を他の分子と組み合わせて新たな集合体を形成する「分子複合体化」に着目しています。この手法により、溶解性、安定性、生体利用率の向上を図り、製剤化が困難な有効成分の実用化を目指しています。