佐久長聖高等学校(2023年9月22日)

佐久長聖高等学校×順天堂大学 高大連携イベント開催

医学の歴史と未来を学ぶ:佐久長聖高等学校の順天堂大学訪問

長野県の佐久長聖高等学校の生徒さん40名ほどが、高大連携プログラムに参加しました。
バスで4時間かけて、順天堂大学 本郷・お茶の水キャンパスへ。その半日の様子を医学教育研究室・皮膚科学講座小川尊資がレポートします。

総合診療科 内藤俊夫教授の特別講義 -災害やパンデミックの経験から- なぜ医師は生きるのか

総合診療科学教授内藤俊夫先生は、総合診療医です。総合診療科とは、患者さんが悩まれている症状を総合的に診ながら診断を行うことを専門とする科で、「何科を受診したらいいかわからない」という患者さんがまずは訪れる駆け込み寺のような診療科です。診断が確定すれば、患者さんは、その疾患の専門医のもと、より専門的な治療を受けられることになります。総合診療医は、あらゆる疾患に精通している必要があります。

そんな内藤先生は、災害医療、そして感染症の専門家でもあり、1994年に地下鉄サリン事件、2011年に3.11東日本大震災を経験して今は順天堂医院のCovid-19対策トップとして目の回る日々を送っています。地下鉄サリン事件の時は、内藤先生もまだ研修医。全く未知の災害にどう対処していいかもわからない状態で「ひたすら患者さんの処置の為に服を切っていただけだった」といいます。その時の「自分は満足に何もできなかった」という経験が自身のモチベーションのひとつになり勉強をつづけきた内藤先生。東日本大震災では現地の状況が何もわからない中の被災地への派遣を引き受け、身一つでとにかく向かい自分にできることはないかと考えた中、被災地で高齢者にたいして肺炎球菌ワクチンの大規模接種を決断したのです。被災地の東北3県における肺炎球菌ワクチンの集団接種の影響は、10年以上経った今でも、この3県が突出してワクチン接種率が高いことが証明されています。
内藤先生はCovid-19パンデミックについても話し、日本が世界中で群を抜いてワクチンに対する抵抗感が根強い中での感染対策の難しさに触れました。また同時にひとりひとりの患者さんの価値観を理解し、寄り添うことの重要性を伝えました。
最後に、ウィリアム・シェイクスピアの「人生は選択の連続である」という言葉を引用しつつ、その時その時の行動の選択が自分の将来を決めていくということ、そして、その都度、それまでの経験が試されていくのだということを強調しました。佐久長聖の生徒さんの集中力のボルテージが終盤に差し掛かるほどに上がっていくような講演でした。

佐久長聖写真①内藤先生

▲前に出て未来の医療者へ、語り掛ける内藤教授

佐久長聖写真②生徒さん

▲内藤教授の熱気に取りこまれ真剣なまなざしの生徒さん

■MEdit Lab授業:「名付けて診断!なづけてナンボ!病名の歴史

続けてMEdit Lab小倉加奈子先生と發知詩織先生のMEdit授業が行われました。内藤先生が講演の中で歴史の重要性についても触れていましたが、まさにMEdit授業のテーマも歴史です。「物事と物事の関係性を見つけることである」というが歴史を学ぶ意義であること、そして歴史的な情報の捉え方が医療の中でどのように活用されているのか説明を受けて早速ワークに臨みました。診療の現場において医師は、病「歴」、既往「歴」、家族「歴」など、実に多くの“患者さんの歴史”を聞かなければいけません。ワークでは「スマホが手元にないと落ち着かなくなる病気」などユニークな6つの症状に病名をつけるものでした。病名をつけるためには、その病気の症状の特徴をうまく短い言葉で言い表せる必要があります。こういった情報の特徴を喩えて表現する「見立て」の力は医師の診断力の源です。ワークショップでは生徒たちが積極的に参加し、たくさんの病名を提案してくれました。

佐久長聖写真③小倉先生

▲MEdit Labの授業では、生徒たちが病名を考えるワークに熱心に参加しました。

医学教育歴史館:先人たちの記録をたどる

医学教育歴史館は、医療の進化と医学の歴史的変遷を探る重要な場所です。学芸員の若尾みきさんの案内のもと、古い医療文献や器具を医師たちの努力と知識の証として展示を見学しました。

佐久長聖写真④生徒さん
▲若尾さんの説明は楽しくてわかりやすいようです。

外科手技シミュレーション実習:医学の未来への挑戦

外科手技は、医学への情熱を持つ高校生にとって魅力的な経験です。この実習では、外科医の折田創先生達の指導の下で手術手技を学び、最新の医療機器でシミュレーションを行いました。学生たちは医療の複雑さを理解し、将来の外科医をイメージしているのか目を輝かせていました。

佐久長聖写真⑤生徒さん
▲電気メスでの手技に引き込まれる生徒さん。真剣なまなざしです。

長野出身の在学生との交流

順天堂大学医学部1年生の先輩方に大学生活や高校時代の受験勉強の方法などを話してもらいました。様々な質問も飛び交い「自分の勉強のモチベーションを保つ方法がわかった」などの意見もあり実り多い、貴重な機会となったようでした。
最後にわたくし小川から「とても盛りだくさんのプログラムでしたが、今日の連携授業を受けて皆が自分の将来の進路選択や学びの方法などを見つめなおす機会になることを強く願っています。」とメッセージを送らせていただきました。

佐久長聖写真⑥交流会
▲フリートークは盛り上がり多くの質問も生徒さんから出ました。

■最後に・・・

医療をより良くしていきたいという熱意や好奇心溢れる生徒さんにこそ、順天堂大学に進学してほしい。そのためにもこちらから生徒さんの学習意欲を掻き立てる教育イベントを展開していきますので、順天堂大学の高大連携イベントの動向にこれからもご注目ください。

佐久長聖写真⑦集合写真

▲小川秀興講堂での集合写真