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女性スポーツセンター Women in Sport 女性スポーツに関する情報発信サイト
vol.010
リサーチ

遺伝子研究により女性スポーツの競技力向上は可能か?

女優のアンジェリーナ・ジョリーさんが遺伝子検査を受けて、がんを発症する可能性が高いと診断された乳房や卵巣などを摘出した、というニュースを覚えている人は多いと思います。遺伝子はヒトの設計図。ひとりひとりで異なり、基本的に一生変わることはありません。スポーツ界でも遺伝子の研究が進み、競技力に影響がある遺伝子型も明らかになってきました。女性スポーツセンターでも、この分野の第一人者、順天堂大学の福典之准教授が研究に取り組んでいます。遺伝子研究がすすむと、スポーツ選手にとってどんな未来が待っているのでしょう。
福典之

福 典之

順天堂大学大学院スポーツ健康科学研究科スポーツ健康医科学研究所准教授
専門はスポーツ生理・生化学ならびにスポーツ遺伝学で、主に運動能力を規定する遺伝要因の解明に取り組んでいる。

「完ぺきなアスリート」は出現するか?

現在、短距離に秀でた遺伝子型や持久型スポーツに影響を及ぼすとみられる遺伝子型などが明らかになっています。では、いつか技術が発達したとき、特定の競技に特化した「完ぺきなアスリート」が生まれるのでしょうか?

福准教授は「それは夢物語」と言います。例えば、持久型の影響があるとみられる23種類の遺伝子多型(いでんしたけい)すべてを持つ確率は1000兆分の1未満だという研究結果があります。地球には70億人しかいないのですから、完ぺきな遺伝子を持つアスリートは存在する可能性は極めて低いことになります。
また、最近ネットなどで見る遺伝子検査を子供に受けさせ、競技を決めようとすることも福准教授は「現段階では時期尚早」と一蹴しました。「αアクチニン3という遺伝子の型(RR型、RX型、XX型と3種類)を調べると、短距離に向くかどうかは明らかになりますが、スプリンターに多い遺伝子型、RR型やRX型であったとしても、この遺伝子が影響するのはおそらく200mまでです。それ以上に距離が伸びた場合はほとんど関係がなくなる。RR型やRX型でなかったとしても100mや200m種目で五輪に出場できないといった程度の判定にしかならないのです」
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ただ、遺伝子検査によって個々の競技特性を知ることには意味があるといいます。福准教授は長距離ランナーだった高校時代、チームメートと同じ練習をしているのになぜか自分だけにケガが続きました。また、短距離の選手のようにふくらはぎが太く成長していきました。「この競技に向いていないのではないか、と思ったときには他の選択肢がありませんでした。おそらく長距離ランナーとしての素質というよりは、比較的パワー系の競技に向いていた可能性があります」
そして、この経験が遺伝子研究への道に結びつきました。「個人が持つ遺伝子型の特徴によって、適切な競技種目やトレーニング方法、故障のしやすさが異なるのではないか」という大きな命題が福准教授のテーマです。「トレーニングの方法や選手としてのピークがいつになるのかといったことに遺伝子型が関わってくると考えられます。遺伝子情報を基に、トレーニングの量や質を決めるといった個人対応型のトレーニングをすることによって競技力が高まる可能性があります。また、トレーニング効果がすぐに現れない遺伝子型を持つ選手の場合は、じっくり強化を図るといったロードマップが描けるようになると思われます」
しかし、これまで研究対象は男性アスリートがほとんどで、女性アスリートについては研究が進んでいません。今回、女性スポーツ研究センターのプロジェクトのひとつとなり、女性アスリートをめぐる遺伝子研究が一気に進むかもしれません。では、福准教授が現段階で考える日本人女性に向いた競技とは何でしょう。これには日本人の進化が関わるようです。

「日本人は大きく南方系の縄文人と北方系の弥生人に分類されます。弥生人は進化の過程で大陸の寒さと食糧不足に対応するため、体をがっしりと小さくして、皮下脂肪を多く付けました。体温の放出を防ぎ、少ないエネルギーで生活できるようにしたのです。映画テルマエ・ロマエで主人公ルシウスが言う『平たい顔族』ですね。がっしりして低い重心の体格は格闘技の柔道やレスリングに向いていますし、エネルギー効率がよいということは、燃費良く省エネで走ることができるということなので、持久型の競技が向いていると予想されます」

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福准教授のプロジェクトは、女性アスリートのDNAサンプルを数多く集めることから本格始動します。「遺伝子型は一生変化することはありません。ですから、引退後の女性アスリートの協力をいただき、競技生活をレビューしながら研究することも意味があります。また、米国やロシアといったスポーツ強国に、ケニアやエチオピアも加わり持久型アスリートの遺伝子要因を探る国際的なネットワークができています。男女の性差があるのか。あるとすれば何か、これから進展していきます」
文責:女性スポーツ研究センター(JCRWS)
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