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vol.029
リサーチ

女子の身体活動Vol.2 身体活動の男女差を分析!
~女子の身体活動を増やすために~

子ども期に十分な身体活動を行うことは、体力向上や将来の生活習慣病予防につながるだけでなく、学力の向上や、メンタルヘルスの改善にも貢献することが報告されています[1)]。一方で、身体不活動(physical inactivity; 身体活動不足)は世界中に蔓延しており、特に、女子で身体不活動の割合が高いことが問題視されています[2)]。東京都に在住する中学生を対象とした調査では、男子に比べ、女子で1日の歩数が約2,500歩少ないことが明らかになりました[3)]。このような背景を踏まえ、「女子の身体活動」の2回目は、最新のデータをお伝えしながら、身体活動の男女差をクローズアップします!
プロフィール写真_城所哲宏

城所 哲宏 Tetsuhiro Kidokoro

順天堂大学スポーツ健康科学部スポーツ科学科卒業(2012年)。英国・ラフバラ大学大学院スポーツ運動健康科学研究科修士課程修了(2013年)。 2014年4月より、東京学芸大学大学院博士課程在学中。研究テーマは、子どもにおける身体活動(からだを動かすこと)と健康づくり

社会的・文化的な要因が影響?

国際的な医学誌「ランセット」によると、データが取得できた146カ国中137カ国において女子の身体活動量が少ないことが示され、世界中のほとんどの国で、女子がより非活動的であることが明らかになりました[4)]。特に、スポーツへの参加に制限がある中東諸国に在住する女子で身体活動量が極めて少なく、性差が顕著であることが指摘されています[2)]。一方で、社会・文化的に女子が活動的な仕事を担っている国(インドネシア、ネパールなど)では、男子と比べ、女子で身体活動量が多い事例も報告されています[2)]。これらを踏まえると、女子で活動量が少ない背景として、生物学的な要因に加え、社会・文化的な概念(男は外、女は内という考え方など)が我々の行動に影響を及ぼしている可能性が考えられます。

日本は?高校期の運動・スポーツ実施状況が危機的!?

日本の現状を見てみましょう。各年代の運動・スポーツ実施状況を示した図1を見ると、男女ともに小・中学生の間は比較的高く、10代後半に下降して成年期を迎え、高齢期で再び高く推移しています[5)]。女子に関しては、50代以降では男性を上回っているものの、50代未満の年代においては、終始、男子よりも運動実施が低い状況です。特に、高校期で大幅に落ち込み、18歳で33.7%と、他の年代と比べて最も低い値を示しています。児童期・思春期は運動習慣の獲得や骨の発達にとって大変重要な時期[6)]であり、この年代に身体活動量が激減していることは危機的な状況であるといえます。

図1 実施状況が「週1以上の者」の年齢別割合

1 実施状況が「週1日以上の者」の年齢別割合(平成27年度)
スポーツ庁. 平成27年度体力・運動能力調査結果[5)]を参考に作図(2016, 城所)

運動・スポーツに対する趣向の性差

運動習慣だけでなく、運動・スポーツに対する趣向にも男女差があるようです。10代の男女における、過去1年間に行った運動・スポーツの実施状況を表1に示しました。結果、男子では「サッカー」「バスケットボール」「野球」など、いわゆる「運動スポーツ系種目1」が上位を占めていることに対し、女子では「おにごっこ」「なわとび」など、「運動あそび系種目1」が上位にランクインしました[7)]。また、「今後も続けたい、または新たにはじめたいと思う運動・スポーツ種目」に関して、男子では「野球」「サッカー」「バスケットボール」が上位に占めたのに対し、女子では「バトミントン」「バスケットボール」「バレーボール」「テニス」「卓球」「ダンス」が上位にランクインしました(表2)。このように、運動スポーツに対する趣向に男女差があることを考えると、女子の身体活動を増やす上では、画一的なアプローチよりも、男女別のアプローチが効果的である可能性があります。実際の指導現場や体育授業においては、指導する児童・生徒の現状や趣向を把握した上で、女子が「活動したい!」と思うような仕掛けづくりをしていくことがとても重要です。

表1 10代男女における過去1年間に1回以上行った運動・スポーツ種目

1 10代男女における過去1年間に1回以上行った運動・スポーツ種目[7)]

表2 10代男女における今後も続けたい、または新たにはじめたいと思う運動・スポーツ種目7)

表2 10代男女における今後も続けたい、または新たにはじめたいと思う運動・スポーツ種目[7)]

誰もが活動的に過ごせる環境づくりへ

女性の運動・スポーツへの参加に関する社会・文化的な固定概念に対し、近年、世界各国でマスメディアを用いた大規模なキャンペーンが実施されています。スポーツイングランド(イギリス)の「This Girl Can」はその代表的なキャンペーンであり、女性が見た目や体型、能力に関わらず、女性が活動的に過ごすことができる社会を目指して活動を行なっています[8)]。このような取り組みは、男女共同参画を推進し、女性のスポーツ参加率の向上につながるでしょう[9)]。また、女性がより活動的になることは、世界保健機関(WHO)が掲げる「2025年までに身体不活動者の割合を10%低下させる[10)]」という目標達成に大きく貢献します。ヒトの行動や社会的・文化的習慣を変えることは大変な労力を伴うことですが、多機関(学校、地域、家庭、行政、民間企業、研究機関など)が連携することで実現できるはずです。私も「老若男女問わず誰もが活動的に過ごしていけるような社会」を目指し、今後も活動していきたいと思います。
【注釈】
1運動スポーツ系種目と運動あそび系種目の代表例
運動スポーツ系種目:サッカー、野球、バスケットボール、バレーボール等
運動あそび系種目:おにごっこ、かくれんぼ、なわとび、かけっこ等
 
【参考文献】
1) 竹中晃二: アクティブ・チャイルド60min-子どもの身体活動ガイドライン-, 株式会社サンライフ企画, 東京, 2010
2) WHO Global Health Observatory. Prevalence of insufficient physical activity. http://www.who.int/gho/ncd/risk_factors/physical_activity/en/
3) 城所哲宏ら: 日本人中学生における身体活動ガイドライン達成状況に関連する要因の検討. 体力科学. 2016; 65: 383-392.
4) Sallis et al. Progress in physical activity over the Olympic quadrennium. Lancet. 2016; 388: 1325-1336.
5) スポーツ庁: 平成27年度体力・運動能力調査結果: 各年代の運動・スポーツ実施状況及び過去との比較. http://www.mext.go.jp/prev_sports/comp/b_menu/other/__icsFiles/afieldfile/2016/10/11/1313779_005.pdf
6) 女性スポーツセンター: 女性スポーツオンライン. 女子の身体活動Vol.1 Start Active! Stay Active!~からだを動かす習慣をつけよう!~. http://www.juntendo.ac.jp/athletes/portal/research/research5.html
7) 笹川スポーツ財団: 青少年のスポーツライフ・データ. 10代のスポーツライフに関する調査報告書.
8) Sport England. This Girl Can. https://www.sportengland.org/our-work/women/this-girl-can/
9) Brown et al. Gender equality in sport for improved public health. Lancet. 2016; 388: 1257-1258.
10) WHO. Global action plan for the prevention and control of NCDs 2013-2020. Geneva: World Health Organization, 2013.
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