順天堂大学医学部生理学第二講座

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発表論文の解説

オートファジーの抑制はNCoR1の蓄積により生理的脂肪肝を障害する

Loss of autophagy impairs physiological steatosis by accumulation of NCoR1
Takahashi SS, Sou YS, Saito T, Kuma A, Yabe T, Sugiura Y, Lee HC, Suematsu M, Yokomizo T, Koike M, Terai S, Waguri S, Komatsu M.

Life Sci Alliance, 3 (1)

 

 脂肪滴は余剰の中性脂肪を蓄積するオルガネラです。このオルガネラは栄養飢餓に対応するための栄養素リザーバーであると同時に、脂肪毒性を緩衝する機能を持っています。オートファジー、あるいはATGタンパク質が脂肪滴生合成に関与することが提唱されているが、その分子機構は不明な点が多いです。今回、オートファジーの抑制により脂肪滴の数と大きさが減少することを見出しました。マウスの肝臓においてオートファジー必須遺伝子Atg7を欠失させた結果、オートファジー選択的基質である核内受容体コリプレッサー1(NCoR1)が肝臓に過剰に蓄積し、恒常的に肝臓X受容体α(LXRα、核内受容体の1つ)が抑制されていることが分かりました。LXRαは脂肪酸合成、トリグリセリド合成や脂肪酸取り込みに関わる酵素やトランスポーターの遺伝子発現を制御します。肝臓特異的Atg7欠損マウスは、それらの遺伝子発現が低下しており、栄養飢餓や肝部分切除後に起こる生理的脂肪肝がほぼ完全に阻害されていました。

 以前の結果(Pubmed ID: 30952864)と考え合わせると、オートファジーはNCoR1の発現レベルを微調整することで脂肪酸合成、分解を制御すると考えられます。また、オートファジー欠損細胞では脂肪滴が蓄積するという報告と減少するという報告があり論争となってきたが、少なくともAtg5、Atg7を欠損させたマウス肝臓では脂肪滴は減少すると考えられます。

 

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