順天堂大学医学部生理学第二講座

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発表論文の解説

CYB5R3のUFM1化を介したER-phagyの制御機構

The UFM1 system regulates ER-phagy through the ufmylation of CYB5R3
Ishimura R, El-Gowily AH, Noshiro D, Komatsu-Hirota S, Ono Y, Shindo M, Hatta T, Abe M, Uemura T, Lee-Okada HC, Mohamed TM, Yokomizo T, Ueno T, Sakimura K, Natsume T, Sorimachi H, Inada T, Waguri S, Noda NN, Komatsu M.

Nat. Commun. 12:16

 


UFM1システムは、UFM1と呼ばれる小さなタンパク質を別の細胞内タンパク質に共有結合させるユビキチン様修飾システムです。近年、重篤な小児てんかん性脳症を引き起こす国内外の家系において、UFM1システムを構成する因子をコードする遺伝子変異が次々と同定されています。しかし、その病態発症機序は不明であり、アンメット・メディカル・ニーズの高い疾患と言えます。本研究では質量分析によりUFM1の新規修飾タンパク質として小胞体に局在するNADH-cytochrome b5 reductase 3(CYB5R3)を同定しました。高速原子間力顕微鏡や構造モデルからCYB5R3がUFM1により修飾されると構造変換が起こることが分りました。さらに、小胞体上のCYB5R3のリソソーム分解を共焦点定量イメージングサイトメーターにより解析したところ、CYB5R3のUFM1修飾を促すとオートファジーにより分解が誘導される一方、UFM1修飾不能CYB5R3変異体は分解が抑制されることが判明しました(図1)。
図1


小胞体局在型CYB5R3コードする遺伝子変異は潜性先天性メトヘモグロビン血症Ⅱ型を引き起こすことが知られています。この疾患では、精神遅滞、小頭症、全身性ジストニア、運動障害を特徴としており、UFM1システム関連小児てんかん性脳症の症状と酷似しています。そこで、UFM1修飾不能CYB5R3変異マウスを作製したところ、この変異マウスは小頭症を呈しました(図2)。
図2


これらの結果はUFM1システムの遺伝子変異による小児てんかん性脳症は、オートファジーによる小胞体分解低下に起因することを示唆します(図3)。これまで全く謎であったUFM1システムの異常による小児てんかん性脳症発症機序の解明や治療法開発に繋がることが期待されます。
図3

 

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