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“タイ語学留学”で自分のルーツを探求
国際教養学部
新舟 亜理沙さん 2024年度卒業生

国際教養学部では日本スタディ・アブロード・ファンデーション(JSAF)などを利用して、様々な国へ語学留学や文化体験に行く学生が多くいます。
今回はご家族の出身でもあるタイへ興味を持ち、タイ語の語学留学へ行った新舟亜理沙さんへお話をお伺いしました。
語学以外にも多角的な学びのための国際教養学部
今井純子准教授(以下:今井) 高校はどのような学校に通っていましたか。
新舟亜理沙さん(以下:新舟) キリスト教系の私立高校に通っていました。特に国際コースなどはなく、一般的な学校だったと思います。
今井 当時から英語は好きでしたか。
新舟 中2の時、シンガポールからの帰国子女の子と同じクラスになり、その子の英語がとても流暢で、とても驚愕しました!当時、英語は習い事として学んでいたので、得意だと自負はしていましたが、ネイティブスピーカーとの開きを痛感しましたね。そこからもっと上達したいと思い、その子と友達になり、中2の夏に中1の教科書の最初から全部おさらいしました!
今井 それはすごいですね!帰国子女も多い学校だったのですか。
新舟 特に気にしたことはなかったのですが、キリスト教系の学校ということもあり、多かったのかもしれません。ただ、私にとってはその子が一番影響を与えてくれました。
今井 熱心に英語を学ばれていたようですが、なぜ国際教養学部を選んだのですか?
新舟 英語学科やタイ語学科も考えたのですが、学びがその分野に偏ってしまうのではないか心配でした。でも、国際教養学部は多角的に物事を学べると思いました。
今井 他の大学の国際教養学部は考えなかった?
新舟 いろいろと他大学も調べたのですが、順天堂大学は「異文化」「社会」「ヘルス」といった3領域の明記があり、どの選択肢を選んでも自分のやりたいと思えることが学べると思い、フィーリング強く、AO入試で申し込みました。
あとは地元が相模原なので、東京への憧れもあり、御茶ノ水という立地はとても魅力的でした。
今井 遠くはなかったですか?笑
新舟 入学試験の面接でも同じ質問をされ、1時間強と答えたら『遠いね!』と言われました(笑) でも東京にきたからこそ多くの価値観に出会えました。その中で、同じような価値観ではないと友人関係の構築や継続が難しいことも学べました。なので、最初は友達を探すのも私自身ちょっとした悩みでもありました。

今井純子准教授

新舟亜理沙さん
今井 そんな中でも大きな思い出としては留学になりますか?
新舟 そうですね!2年生の後期から3年生の前期まで1年弱行かせていただきました。絶対に順天堂大学を4年間で卒業したかったので、1年生から単位を詰め込んでやっていくことと、その中でも情報収集することがとても難しかったです。当時担任だった吉武先生やMyo先生(湯浅先生紹介)にもレコメンデーション(推薦状)を書いてもらい、チェンマイ大学のみに提出しました。
今井 1つ出して1つ合格はすごいですね。また、留学は2年生の後期終了後から行くことは多かったのですが、10月からというのはあまりいなかったのでとても印象的でした。
新舟 順天堂大学はチェンマイ大学の提携校ではなかったので、色々調べる必要がありました。まずは自分でチェンマイ大学のウェブサイトを見て、英語やタイ語を理解して書類提出をしました。
今井 なぜチェンマイ大学を選んだのですか。
新舟 母がチェンマイ大学を卒業しており、親戚が1名チェンマイ大学経営学部に在学していたので、何かあれば生活面のサポートもできるといった安心感が大きかったですね。また、母からは先生方が熱心で学生とのつながりが強い大学とも聞いていたことも魅力的であり、留学生がタイ語で学ぶ学科があり、私自身にピンポイントでもあったのです。
今井 どこか国際教養学部との親和性も感じますね。
新舟 現地の大学は10月の半ばまでが前期、11月の頭から新学期スタートだったので、少しイレギュラーなケースになってしまいました。また、復学のタイミングとも被っていたので、復学直後の10月は昼に順天堂大学の授業を受け、夜間オンラインでチェンマイ大学の授業を受講しました。
今井 うまくやりくりしていた姿もみていましたが、大変でしたね。
新舟 課題提出や時間をややずらしていただくなど、先生方がとても親身になっていいただいたおかげでなんとか受講することができましたので、本当に感謝しています。
異なる環境での苦労と気づき
今井 実際に現地に行ってみてどうでしたか。
新舟 母の母国でもあるので、旅行としては何度も訪れていたのですが、やはり暮らしてみると色々と違った面もありました。特に気候や食事は日本とは異なるので、体調を崩すことも当初はありましたね。
今井 タイはとても暑そうですもんね。
新舟 ルームシェアしていたのがタイ人で、やはり暑さ耐性が違うので、私が暑いと感じていても、ルームメイトが「普通」と言っているときには冷房つけるのをためらったりしました(笑)そのようなことはしっかりと話し合って協力して暮らしていくことが大切だと感じましたし、私は思ったことを言いづらいタイプなんだなとも気づきました。
季節の変わり目についてもあまりなく、冬でも25度くらいです。タクシーの料金が安かったので暑さ対策でよく使いましたね。タクシーもこちらのバス感覚の運賃で中心街まで移動できますし、アプリケーションで簡単に呼べるので便利さをとても感じました。
今井 食事面はどうでしたか?自炊などはしましたか?
新舟 現地の学生はほとんど自炊しないのもあり、私も市場にいって食事をすることがほとんどでしたが、食事がトムヤムクンを中心にとにかく辛く、慣れるのが精一杯でした(笑)日本食が恋しい時はショッピングモールに日本のチェーン店があったので食べたり、中国人が経営している中華料理屋さんに中国出身の学生と一緒にいったりしていました。
今井 アジア圏特有で、作るよりも買った方が安いのかもしれませんね。

現地の繁華街

チェンライ県にあるフアイプラカン寺院
新舟 そんな中、実は現地の焼き肉屋さんで食中毒になってしまいまして…。夜間にもかかわらず自分でタクシーを呼んでパスポートと保険の保証書を持って病院にかけこみました。現地はPM2.5が多く、アレルギーになってしまい、行きつけの病院があったのですが、昼間は日本語通訳の方が病院にいるものの、夜間は退勤しており、手続きの書類を読んだり病状を説明したりしたのは大変でした。
今井 専門用語もあるし体調も辛いしで大変でしたね…。
新舟 しかも薬剤師から入院の部屋にタイ語で連絡もきたりして…(笑)
今井 顔がタイ人だと思ったからなのかな?(笑)
新舟 「名前が日本人ぽいのにタイ人だからどっちかと思った!」と言わましたね(笑)ただ、入院翌日にタイ語検定受験のためにバンコクに行かなければいけなくて、1泊で退院しました。
今井 結果はどうでしたか?
新舟 無事に準2級に合格しました!高校で3級は合格していたのですが、なかなか受からなかったので、とても嬉しかったです!
今井 体調もすぐれない中、とても素晴らしい結果ですね!!

タイを代表する動物といえば“象”!

自然も豊かでアクティビティも満載
今井 現地に日本人学生は多かったですか。
新舟 ほとんどいませんでしたね。同じ学部に留学生は10人弱いただけで、その他では他学部に正規留学生で2名ほど友人が通っていたくらいです。チェンマイはタイの中でも北に位置しており、ミャンマーや中国と近いので二つの国の出身の方が多く、知り合うことも多かったです。その中で、ミャンマーは内政の問題により母国の大学がなくなってしまったり、デモ活動を行った過去があったり、日本では考えられない問題を抱えている人も少なくなかったです。その理由もあってか、とても勤勉でGPAも高い人がほとんどでした。母国ではなく海外のスカラシップを獲得したいと目指している人もいましたね。
今井 それぞれの国のバックグラウンドがありますよね。
新舟 “陸続きの国”特有なのかなとも思いました。
今井 タイ人の知り合いも多かったのですか。
新舟 タイ人はバディやルームメイト経由で知り合った方が多いのですが、ほとんどの方が優しかったです。
今井 現地ではタイ人と日本人どちらで見られることが多かったのですか。
新舟 タイ人として見られることも多かったのですが、どこか外国人として見られていたような気もしました。その点、中国人やミャンマー人は同じ留学生ということもあって、特に仲良くしてくれました。
今井 留学生同士で会話する言語は?
新舟 中国人の同じ学科のみんなはタイ語が上手です。ミャンマーの方はイギリスの植民地の背景もあってか、英語で教育を受けるので、英語がとても上手だったので、私も教えてもらいました(笑)
今井 それはとても面白いですね!タイ語だけではなく色々な言語の場があったのですね。日本に関する考え方や価値観も変わりましたか。
新舟 変わりましたね。日本ではアルバイトやサークル活動など、ゆったり楽しむ学生が多いが、タイでは勉強にほとんどの時間をかけている、最優先で危機感をもっているのが違うなと感じた。
今井 もともと勤勉な新舟さんですが、それでも勉強に対する姿勢が変わりましたか?
新舟 そうですね。朝早くから身支度を整えて、8時には家や図書館などで勉強し、昼食を少しとってあとは夜22時くらいまでひたすらやるような毎日でした。ほとんどの学生が同じようなモチベーションでしたし、試験期間中は大学の図書館も24時間あいていますので、図書館に寝具をもってきて仮眠をとりながら勉強している人もいるくらいです。とにかく現地は大学名とGPAが就職に直結するので、必死になって勉強をしている人が多いですね。
今井 確かに、日本の大学生とはモチベーションが違うように思いますね。勉強は留学生同士や現地の人とすることが多かったのですか。
新舟 たまにバディである現地の子と勉強はしましたが、それ以外は一人でした。友人といると色々な話をしてしまうので(笑)
今井 さすが、自己管理能力が高いですね!
新舟 今まで実家で生活をしていましたが、寝坊しても誰も朝起こしてくれませんし、ご飯も自分で用意しなければならないので、大きく意識が変わったと思います。

煌びやかな建造物もタイならでは(写真はドイステープにて)

チェンマイ大学付近ランモーエリアからは雄大な景色も
留学中に異例の卒業論文制作
今井 順天堂大学を4年間で卒業することを掲げていたので、留学中に卒業論文のテーマを決めてデータ採取も行う珍しいパターンでもありましたが、実際にやってみてどうでしたか。
新舟 チェンマイ大学の日本語学科で学ぶタイ人の語彙学修を調査しました。現地の先生に書面でお願いもしたのですが、調査を始めるから収集まで2か月ほどしかなかったので大変でした(笑)
今井 始めるまでの書類サインとか、怒涛でしたよね(笑)
新舟 メールでの連絡や訪問しての打診まで、本当によく現地の先生にもご対応いただきました。卒論は大変でしたけど、先生の指南どおりにやれば問題なく進められましたし、楽しくみんなと協力しながら納得いくものができました。
今井 現地での英語学修はどうでしたか。
新舟 タイ語の勉強も大変ではありましたが、困った時は母に教えてもらえました。ただ、英語は現地では誰も助けてくれないのは少し苦労しましたが、ミャンマー人の方とも知り合えたので問題なくできたと思います。また、グループプレゼンテーションを行うことがあったのですが、現地の指導教員が厳しく、台本の利用も禁止だったので、スライド作成もキーワードをちりばめるなど工夫したことが良い経験でした。実は他のメンバーがあまり積極的ではなかったので、役割分担も自分で行わなければならず大変でしたが、これも良い経験となりました。
今井 何かその中で国際教養学部での学びが活きましたか。
新舟 EGC(2年次英語科目)もプレゼンテーションを行う授業でしたので、前期だけの受講でしたが、発表までのイメージも出来、受講しておいてよかったなと感じました。あとは教科書も聞こえてくる言語もすべて母国語ではないので、そこになれるのがとても大変でしたね。帰国後にFILAの授業が日本語で少し安心した記憶があります!
今井 他に4年間で受けた授業の中で印象的だった授業はありますか?
新舟 今井先生がご担当されている『応用言語学』は卒論後に受けたのですが、卒論前に受けていればもっと卒論に深みが出たのに!とは思いました(笑)
今井 好成績とらないと!みたいなプレッシャーもありましたかね(笑)
新舟 でもその他にもたくさんの学びがあるので、選択している授業の中で興味があることを最初に見つけておけば、卒論テーマや執筆が楽になると思います。
楽しそうに語る新舟さんと、ゼミでのサポートの懐かしさを振り返る今井先生
今井 チェンマイ大学の日本語学科を訪れたとのことですが、現地で教えている日本語で気になるものはありましたか?
新舟 大学4年生のクラスにお邪魔したのですが、ビジネスレベルの語学を学んでいました。気づいた部分としては、母国語だからこそ気づいていない文法があったのが新鮮でした。
今井 タイ人にとって日本語学ぶのは人気なのですか?
新舟 やはり日本のアニメを好きな方も一定数いるので、アニメから覚えた日本語だけで日常会話ができる人や、高校で第三言語を日本語選択する人も少なくないそうです。
小さいころ、夏に現地の小学校のプログラムに参加したことがあり、英語に加えて中国語を教えていたのも印象的でした。
今井 第三言語を学ぶ国は多いですよね。
新舟 やはり陸続きの国の特有な文化なのかなとも思いました。隣国との関係性が密接だからこそ、第三言語を学ぶのかなと思います。
今井 日本語をタイで勉強している方の就職先はどのようなところになるのですか?
新舟 多いのは通訳業が多いそうです。工場の事務で働き、日本語の翻訳をすることや、ビザの発行時の翻訳などが主な進路先です。あと、タイは自分の学んでいる学部学科がそのまま就職先に直結することが多いと思います。
チャレンジしたからこそ見える未来とチャンス
今井 これからもタイ語は続けますか?
新舟 続けます。母としか話す環境もないですし、毎晩タイ語の記事を読んで忘れないようにしています。
今井 素晴らしいですね。今後はどのように活かそうと思いますか?
新舟 就職先で多くの外国人のお客様と関わるので、そこで活かしていこうと思います。
今井 是非ご活躍をいただきながら、ゆくゆくは順天堂大学とチェンマイ大学との懸け橋になっていただくことも期待しておりますよ!単位もとりながらでしたが就活はどのようにしましたか?
新舟 3年の3月からエントリーしはじめて、4年の8月頃に終わりました。授業時間に面接時間がかぶらないように調節したり、スーツで授業を受けたり、色々な工夫をしました。単位も4年の前期で詰め込む計画でしたが、就活のことを考えて分散させたのも工夫しました。
今井 そんな中でも学部開設10周年記念講演会を含め、ボランティア活動も多く携わってくれていましたよね。
新舟 留学を機にいろいろなことにチャンスがあると感じられるようになりました。留学自体が大きなチャレンジ・決断だったので、そこから特に障壁なくチャレンジができていますし、チャレンジした先にある出会いなども楽しみにしています!
今井 神田外語大学主催のスピーチコンテストも自分自身で探して参加していましたね!
新舟 最初は私の母が「誰でも出られるらしいよ」みたいな感じで情報を持ってきたんです(笑)本当に誰でも出られるのかな?と思い、4年生の8月に主催者へ問い合わせたところ、神田外語大学の先生や今井先生に手伝っていただきエントリーしました。
今井 チェンマイ大学の先生ともコンタクトをとっていましたね。
新舟 お世話になったチェンマイ大学の先生の教育レベルがとても高く、細かな部分まで教えてくれた先生に是非協力してもらえないかと。タイ語から先に原稿を作成したのですが、日本語訳を今井先生に直していただきましたし、色々な先生にご指導いただきました。

神田外語大学主催のタイ語弁論大会に出場

最上位カテゴリーで見事2位に輝く
今井 チャンスやリソースを活かすことが上手だなと思います。大学生活で難しかったことはありますか。
新舟 当初大学での勉強のコツをつかむのが難しかったです。また、友達の影響もありヘルス系の授業をいくつか履修したのですが、理系出身ではなかったので結構難しかった記憶があります。ただ、いろいろと聞きながら勉強をすればしっかりと学べる内容でもあったので、それが勉強に対する自信にもなりました。
今井 ヘルス、社会、コミュニケーションどれも満遍なく学び、その中で選別できたことは素晴らしいことですね。
新舟 色々と履修する中で今井先生のゼミの「言語習得」という分野にとても興味を惹かれ、応用言語学でも色々種類があることを感じ、「どのように学んでも選択肢がたくさんありそう!」とも思えました。
今井 まわりにも留学帰りの学生が多かったですし、馴染みやすい環境でもあったと思います。4年間で国際教養学部へのイメージに変化や発見はありましたか。
新舟 入ってみて感じたのは、教職員の方々がチャレンジに対してとても親身になってサポートしてくれることです。わからないことを質問しても、話をよく聞いてくれますし、学生の可能性を広げてくれる回答ももらえます。どの領域の先生もつながりが深く、あたたかい場所だなと感じましたし、学科が1つしかないことが自分の可能性の幅を広げることもできるのでプラスでもあると感じました。私もそうでしたが、入学時はやりたいことが不明瞭でも問題はないのですが、授業を受けることで色々と興味がわいてきます。そのまま漠然と過ごしてしまうともったいないし退屈だと思うので、国際教養学部生やこれから入学を考えている方は、やりたいことをいち早く見つけられると、より良い経験が多くつめるのかなと思います。
今井 留学を考えている学生に向けてもメッセージをお願いします。
新舟 なぜ留学に行きたいのか、なぜその国なのか、どういう目的をもって勉強したいのかを事前に考えを固めるだけでも、とても有意義な留学になると思います。また、行きたい時期から逆算して情報収集や準備期間を設けることがとても大切になります。実際に行くとあっという間に終わってしまいますが、行けばチャンスはたくさんありますので、留学先でより多くのアクティビティに参加することや、そこから学ぶことを大切にしてほしいと思います。