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2023.05.19 (FRI)

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【座談会企画 前編】スポ健で見つけた私の学び 卒業研究を振り返る

スポ健在学生の「リアルな本音」を語るべく、集まってくれた博士前期課程在学生の5人。前半ではそれぞれが取り組んだ学部生時代卒業研究を振り返り、テーマのポイントや苦労した点、身に付いたスキルなどを共有します。

#順大×スポーツ #順大×スポーツ医学 #順大×学生サイエンティスト

牟⽥朱⾥さん

牟⽥朱⾥さん

スポーツ医学研究室 

博士前期課程2年

座右の銘:誠実

近藤ちひろさん・座右の銘

近藤ちひろさん

精神保健学研究室

博士前期課程1年

座右の銘:無知の知

渡部宙さん・座右の銘

渡部宙さん

科学コミュニケーション研究室

博士前期課程1年

座右の銘:巨⼈の肩の上に⽴つ

田中萌さん・座右の銘

田中萌さん

スポーツ経営組織学研究室

博士前期課程1年

座右の銘:Love the life you live , Live the life you love.

錦織岳さん・座右の銘

錦織岳さん

スポーツ医学 アンチ・ドーピング研究室

博士前期課程1年

座右の銘:今この時を全⼒で楽しむ。

※それぞれの座右の銘に込める想いは「後編」で紹介します。

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牟田)それぞれ違う研究室から集まった初対面のメンバーということで、少し緊張もしているかと思いますが、リラックスして楽しく話していきましょう。皆さんはこれから博士前期課程に進学されるということなので、この機会にぜひ仲間になってくださいね。

※2023年3月取材。

 

渡部)大学院への進学前に友達が増えるのは嬉しいですね。人脈を広げる貴重な機会、楽しみです。

 

一同)よろしくお願いいたします。

 

前編・座談会の様子_トリミング済

①卒業論文のテーマと、テーマを決めた背景・調査方法について

牟田)テーマは「性⼤学アスリートにおける外傷・障害の受傷による競技離脱がメンタルへルスに与える影響」です。私は女子バスケ部で学⽣トレーナーとして活動し、ケガで競技を離脱する選手たちを間近で見ていました。その中で、ケガによる競技離脱がその後の個人のメンタルにも大きく影響するのではと推測し、学問的に研究したいと思いこのテーマを設定しました。研究では、ケガをした女性アスリートにアンケート調査を行いました。

 

近藤)私は「運動選⼿我同性と性格:スポーツマン的同性が性格に及ぼす影響」をテーマに執筆しました。このテーマに興味を持ったのは、スポーツ理学の授業で「バーンアウト症候群」について学んだ時です。選手生命を阻む精神疾患ですが、この原因の一つが選手自身の自我同一性すなわちアイデンティティだと知り、衝撃を受けました。さらに調べてみるとアイデンティティと性格形成は密接に結びついていると分かったので、アスリートを対象にアンケート調査を行い、その関係を分析しました。

 

渡部)僕の卒論タイトルは「社会課題の解決に向けたバーチャル空間デザインにデザイン学アプローチは有効か?」というものです。ゼミでoviceというバーチャルオフィスを使った際、バーチャル空間を社会課題の解決に活できるのではないかと考えたことがきっかけでした。その実現のために、バーチャル空間を誰もが使いやすいものにしたいと考え、デザイン⼈間⼯学のフレームワークを⽤いてデザインを検討しました。

(ご参考)

スポーツや教育の課題解決にメタバースはどう活かせるか?学生たちが挑戦する新時代のアクティブラーニング
https://goodhealth.juntendo.ac.jp/pickup/000284.html

 

⽥中)私は「運動部活動に所属するにおけるコミュニケーション能と対信頼感に関する研究」を行いました。バレーボール部でマネージャーを務める中で、集団競技において不可欠な「信頼関係」を築くためのコミュニケーションがいかに難しいかを痛感したことがきっかけです。どうすればスムーズに人と信頼関係が築けるのだろうという疑問から研究を始め、集団競技の部活のメンバーを対象にアンケート調査を行いました。

 

錦織)僕の卒業論文は「ドーピング検査対応に向けたアンチ・ドーピング対策の実態 :陸上競技アスリートのインタビュー調査から」というタイトルです。高校2年生の時に初めて出場した陸上の全国大会でドーピング検査があったことが強く印象に残っていたことから、このテーマにしました。陸上の大学生アスリート8人へのインタビュー調査から、アンチ・ドーピング対策の詳細と、その対策が彼らの競技生活や日常生活に与える影響を調査しました。

 

牟田)ありがとうございます。皆さんの多様な研究テーマから、スポーツ健康科学部での学びの幅広さが感じられますね。

②卒業研究を進めるにあたって苦労した点

牟田)論文を書くのが初めての経験だったので、何から手を付けていいか分からず苦労しました。特に、アカデミックな文章の書き方や、図表やグラフの使い方が難しかったです。この克服のために後輩の皆さんにおすすめしたいのは、先行研究の論文をたくさん読むこと。内容だけではなく、文章の書き方や論を運ぶ流れも非常に参考になります。

 

近藤)牟田さんの意見に共感できますね。私はさらに初期段階での苦労ですが、研究テーマがなかなか決まりませんでした。興味があるトピックを検索すると、たくさんの先行研究が出てきて……研究においては新規性が一つの評価ポイントになりますが、「もうすでに研究し尽されているとは」と衝撃を受けました。この経験を踏まえて私が見いだした、独自の研究テーマを導くコツは先行研究をしっかりと読み込み「何が明らかにされていて何が分かっていないのか」を見極めることそして先行研究を踏まえて、自分なりの問いを立てることです。

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渡部)なるほど……先行研究が多すぎて苦労した近藤さんとは対照的に、僕は先行研究が少なかった点に苦労しました。新しい分野であるがゆえに「メタバース」に学問的な定義づけがなく、人によって言葉の使い方が違ったり。テーマが新しい分、研究方法にはすでに確立されているフレームワークを採用しました。後輩の皆さんも自分の研究について、まず「何が新しいのか」を明確にし、それ以外の部分は般的に認められているものにすることで、新しさのバランスをとるのがおすすめです。

 

錦織)アンチ・ドーピングの分野でも、日本における教育に関する先行研究の少なさに苦戦しました。その上、大学生アスリートで尚且つ陸上競技アスリートに絞った研究となるとほぼ無く……前例が無い中、自分なりに研究方法をアレンジして論を組み立てていくのがとても難しかったです。先生に頻繁に相談に行き、なんとか形にできました

 

牟田先行研究が多いテーマも少ないテーマも、それぞれの苦労がありますね。論文を作成する過程での苦労はありましたか?

 

田中)はい。私は調査の回答数を集めることに苦労しました。集団競技の部活動を対象にSNS等でアンケート調査への協力依頼をしたり、部活動が終わるタイミングを狙って直接依頼しに行ったりと工夫したのですが、なかなか回答数が延びませんでした。

 

錦織)アンケート調査はその難しさがありますよね。僕はインタビュー調査を行う中で、対象者へのバイアスがかからないように質問することに苦労しました。自分個人としての感情が入り込まないよう、「質問者と対象者」として初対面に近い状態で聞きとりを行うよう意識していました。加えて、8人分のインタビュー調査の字起こしにはかなり根気がいりました。

 

渡部)それはなかなか骨の折れる作業ですね。文字起こししたものをどのように分析したのですか?

 

錦織「危機管理行動」など事前に調査キーワードを決めておき、会話の中での出現箇所を特定してカテゴリーに振り分ける作業しました。大変でしたが、分析を通じて選手たちの捉え方の多様性を知ることができたので、楽しみながら取り組みました!

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③研究を進めるにあたり、どんなスキルが必要でしたか?

牟田)私の場合は、統計のスキルの重要性を感じました。膨大なデータが集まったとしても、それを整理して解析しなければ意味を成しません。「どのように解析するか」「解析しやすいようにするためは、どのようにデータを整えるか」といったことにかなり頭を使いました。

 

近藤)同感です。私は統計学の授業で習った基礎が、「SPSS」という統計解析ソフトを使う際に活かされました。統計は、一度に全てを理解するのは難しいので、コツコツと時間をかけて勉強することをおすすめします。

 

田中)そうですね。また、基礎的かもしれませんが、統計ではExcelのスキルも必要だと感じました。Excelで分析する機能を使いこなせるようになっていると、かなり楽だと思います。

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錦織)確かにExcelやWordは、研究を進める中で欠かせないスキルですよね。普段何気なく使うツールですが、案外知らない機能も多くありました。例えば、Wordで表を入れるとずれてしまって直すのに時間がかかったり、フォーマットや余白の入れ方に迷ったり。

 

牟田)基礎的なスキルですが、改めてしっかり勉強するのが良いかもしれませんね。統計の他はどうですか?

 

錦織)そうですね……研究を進める中で必要だと感じたのは、インタビュー調査で「端的に問う」力です。インタビュアー側の問いがあいまいだと、対象者から聞きたい回答が得られません。

 

渡部)確かに今日もはきはきと明解にお話をされていますね。僕の場合、「スキル」と言うかどうかは微妙ですが論文査読者の視点を持つことを意識していました。論文の評価項目である新規性、信頼性、有効性3項⽬を常に念頭に置き、 ⾃分の研究に対して「どこが新しいのか?」「なぜ正しいといえるのか?」「どんな⼈や分野に役⽴つのか?」を問いかける。それによって論の運び方が固まったり、内容として入れるべき要素が決まったりと、スムーズに進みました。

 

牟田)ありがとうございます。研究となるとつい没頭してしまい、第三者視点が抜けてしまいますから、重要なポイントですね。では、場も良い具合に和んできたところで、後編では皆さんが進学された博士前期課程での研究についてお話ししていければと思います。

Focus person

金箱ちひろ さん

卒業研究を振り返って、自身の研究テーマや研究の進め方、苦労した点、必要なスキルなどを金箱ちひろさんに伺いました。

私の卒業研究のテーマは「外的および内的なタイミングでの運動開始と心周期の関係」です。自身が高校まで取り組んでいた陸上競技の競技特性に当てはまるテーマであったことから、この研究に興味を持ちました。研究を進めるにあたっては複数の苦労がありました。慣れない実験の道具や手順に戸惑ったり、途中でデータの取得に失敗してしまい、実験をほぼ一からやり直すことになってしまったり……。実験の指示においては特に、言葉のかけ方を統一しないと正確なデータが取れないため、被験者との細かなやり取りにも注意が必要でした。こうした苦労が多い分、卒業研究は自身の成長につながるものであり、多くの学びを得ることができたと感じています。この経験を生かして、今後も新しい研究課題にチャレンジしていきたいと思います。

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金箱ちひろさん

生理学研究室

博士前期課程1

座右の銘:「なるようになる」

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