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2021.06.28 (MON)

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米国血液学会誌Bloodに解説「急性骨髄性白血病のがん細胞の命綱を断つ」が掲載されました。

血液学分野のトップジャーナルである米国血液学会誌「Blood」(Impact Factor 17.543)に、本学大学院医学研究科・臨床病態検査医学講座の田部陽子教授が、姉妹協定校である米国MD Anderson がんセンターのMarina Konopleva教授とともに執筆した解説「急性骨髄性白血病のがん細胞の命綱を断つ」が掲載されました。

≪論文情報≫
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34165546/
タイトル:Break the lifeline of AML cells
doi: 10.1182/blood.2021011475
著者:Yoko Tabe, Marina Konopleva

臨床病態検査医学講座 田部陽子 教授のコメント

田部陽子教授

大学院医学研究科 臨床病態検査医学講座
田部陽子 教授
急性骨髄性白血病(AML)細胞や白血病幹細胞(LSC)は、ミトコンドリアの中で行われる脂肪酸代謝や酸化的リン酸化といったエネルギー産生に強く依存して生存しています。一方で、正常な造血細胞と比較して、AML細胞ではこれらのエネルギー産生の予備能が低いという特徴があります。そこで、これらのエネルギー代謝を阻害することによって、正常細胞を傷つけることなく抗がん効果が期待できます。本解説では、脂肪酸代謝や酸化的リン酸化に関与している酵素である超長鎖アシルCoAデヒドロゲナーゼ(VLCAD)が有効な標的になることやVLCADを阻害する新規化合物が新しい標的治療薬となることを報告した研究を紹介しました。白血病細胞の代謝を標的とする新しい治療法は、非常に魅力的でありますが、治療薬の実用化のためには、まだまだ答えなくてはならない課題が山積しています。例えば、白血病細胞は単一のクローンではないことがわかっており、すべての細胞が代謝標的治療に反応するのか?有効性のマーカーは何か?重大な副作用はないか?継続的な代謝阻害に対してがん細胞が順応し、耐性化することはないか?など、答えなくてはならない問いは数多く残されています。しかし、「がん細胞の命綱となっている特殊な代謝を断ち切る」という戦略は、より良い治療に向けた一歩になると考えられます。
本解説は、本学とMD Anderson がんセンターとの姉妹協定下で推進している白血病の代謝に関する共同研究の中で、Scientific Reports誌(2018年)*、Cancer Research誌(2017年)、Frontier誌(2019年)などに報告してきた一連の研究成果に基づいて執筆したものです。

*2018年11月21日プレスリリース「アボカド由来の成分が抗がん剤の効果を高めることを発見~抗がん剤投与量が制限されがちな高齢患者に副作用の少ない新規白血病治療法の可能性~」