Twitter
学校法人順天堂@juntendo1838
スポーツ健康科学部@juntendo_sakura
医療看護学部@juntendo_nurse
国際教養学部@juntendofila
理学療法学科@Juntendo_PT
診療放射線学科@Juntendo_RT
練馬病院@juntendo_nerima
YouTube
学校法人順天堂順天堂/Juntendo Univ
LINE
学校法人順天堂@juntendo
スポーツ健康科学部@juntendo.sakura
Instagram
順天堂大学juntendo_1838
スポーツ健康科学部juntendo_sakura
国際教養学部juntendo_fila
理学療法学科juntendo_pt
診療放射線学科juntendo_rt
順天堂NEWSJuntendo News
順天堂大学NEWSUs NEWS
研究活動Research activities
順天堂大学医学部附属病院NEWSHospitals NEWS
NEWS
2021.09.23 ()
プレスリリース大学・大学院医学研究科研究プレスリリース

アフリカにおけるアルテミシニン耐性マラリア出現の証拠を発見

~ 1滴の血液から簡単に耐性マラリアの出現を早期発見することが可能に ~

順天堂大学医学部・熱帯医学寄生虫病学講座の美田敏宏 教授、Balikagala Betty 博士研究員、福田直到 助教らとGulu大学(ウガンダ共和国)、大阪大学、長崎大学の国際共同研究グループは、アフリカにおいてマラリアの第一選択薬であるアルテミシニン*1への薬剤耐性マラリアが臨床的に出現している証拠を発見しました。原虫レベルでのアルテミシニン耐性を持ったマラリア原虫がウガンダ共和国に出現していることは、2018年に私たちの研究グループより報告しています。それから3年間にわたり詳細かつ臨床的な薬剤耐性調査およびゲノム解析を行った結果、WHOの基準を満たすアルテミシニン耐性を持つマラリア原虫が臨床的に出現していること、およびアルテミシニン耐性責任遺伝子であるKelch13遺伝子の二つの変異が耐性の鍵であることを明らかにしました。本成果は、東南アジアの一部地域にのみ出現していると考えられていたアルテミシニン耐性が世界のマラリアの9割を占めるアフリカにも出現していることを決定づけるとともに、耐性を検出する分子マーカーの同定により1滴の血液から薬剤耐性マラリアの出現・拡散の早期発見への道を切り開いたものです。本論文はNew England Journal of Medicine 誌に2021年9月23日付で公開されました。
本研究成果のポイント
  • ウガンダ共和国において3年間にわたり詳細な臨床・寄生虫学的薬剤耐性調査およびゲノム解析を実施
  • アルテミシニン耐性原虫がアフリカに出現していることを決定づけ、耐性遺伝子変異を同定
  • 分子マーカーによるアフリカでのアルテミシニン耐性出現・拡散の簡便な早期検出法の道を切り開いた

背景

マラリアは蚊が媒介する世界三大感染症のひとつで、毎年2億人以上の新規患者と40万人もの死亡者が出ています。アルテミシニンは迅速かつ強力な治療効果を持つマラリア特効薬で、その導入はマラリア死亡者を劇的に減少させ、その功績に対して2015年ノーベル生理学・医学賞が贈呈されました。しかし、アルテミシニン耐性をもつマラリア原虫が東南アジアの一部(大メコン圏)に出現していることが課題になっています。私たちは新規アルテミシニン耐性検出法を用いたin vitro(試験管内)薬剤感受性試験*2をアフリカのウガンダ共和国で実施し、原虫レベルでの耐性*3を持ったマラリア原虫がアフリカに出現していることを、2018年に世界で初めて報告※しました。しかし、このような原虫の臨床的、公衆衛生学的な存在意義は謎のままでした。アフリカには世界のマラリア患者の9割が集中するため、耐性原虫が出現すると大メコン圏を大きく凌駕する公衆衛生学的な影響が懸念されます(図1)。
※ 2018年プレスリリース:マラリア第一治療薬の耐性原虫がアフリカに出現していることを発見

図1

図1 アフリカのマラリアとアルテミシニン耐性

内容

アフリカではマラリアの流行度が高く、そこに住む人たちは高頻度の感染によってマラリアへの強い免疫を獲得しています。この免疫がもつマラリアへの抵抗性は、薬剤耐性のポテンシャルを持つ原虫の体内からの排除にも一定の効力があるため、アフリカでは原虫が相当高い耐性を持たないと臨床的な耐性を示しません。私たちが以前アフリカでその存在を発見したin vitroでのアルテミシニン耐性原虫の臨床的な意義はこれまで明らかでなく、WHOは「アフリカにアルテミシニン耐性マラリア原虫が出現している確証はない」、としています。私たち研究グループはこの点を解明するために、2017年から3年間ウガンダ共和国のグル市で調査を実施しました。アルテミシニンは通常他の抗マラリア薬と併用して用いられていますが、単剤での効果を明らかにするため、入院マラリア患者にアルテミシニンを投与後、頻繁に採血し治療効果を詳細に検討しました。
 その結果、240人のマラリア患者において5.8%にあたる14人がWHOのアルテミシニン耐性基準を満たすことを見出しました。そのうちの13人が東南アジアにおけるアルテミシニン耐性責任遺伝子Kelch13 遺伝子にA675VもしくはC469Yの変異を持っていることをつきとめました。実際、変異原虫ではin vitroレベルでも、野生型原虫より有意に高い耐性レベルを示していました。さらに、2015年には存在しなかったA675VおよびC469Yを持った原虫が2019年には合わせて16%まで急激に増えていることも明らかにしました(図2)。次に耐性原虫の由来を明らかにするため、耐性、感受性原虫の全ゲノム配列を決定し、大メコン圏に分布するマラリア原虫との比較解析を行った結果、ウガンダで発見したアルテミシニン耐性原虫はアフリカで独自に出現したことをつきとめました。
以上の結果から、アフリカにもアルテミシニンへの臨床的な耐性を示す原虫が出現し急激に広がっていることが決定づけられました。さらにアルテミシニン耐性と強く関連している遺伝子変異を同定しました。

図2

図2 本研究で明らかにしたアフリカにおけるアルテミシニン耐性マラリアの証拠

今後の展開

アフリカではマラリアへの強い獲得免疫があるため、薬剤耐性マラリアの出現や拡がりが潜在化しやすく、地域における耐性の出現を早期に発見することが困難です。今回発見した変異を分子マーカーとして用いることによって、1滴の血液から簡単に耐性の出現を早期発見できるようになります。研究グループはKelch13 遺伝子に変異が起こる前に、いくつかの遺伝子の変化が存在し、それはアフリカ固有なものと考えています。その変異が同定できれば、アルテミシニン耐性のメカニズム解明が一気に進むとともに、流行地においては耐性を起こす前の「アラート」としての耐性出現予測に応用できることから、耐性原虫の出現、蔓延防止の切り札となることが期待されます。

用語解説

*1 アルテミシニン: 1970年代に中国で開発された抗マラリア薬。現在最も有効な抗マラリア薬としてマラリア治療の第一選択薬となっているが、東南アジアの一部地域でアルテミシニン耐性のマラリア原虫が出現して問題となっている。
*2 in vitro(試験管内)薬剤感受性試験: マラリア患者から得た血液中の原虫をアルテミシニンとともに培養することによって原虫レベルでの感受性を評価する方法。
*3 原虫レベルでの耐性: in vitro薬剤感受性試験によって耐性を示すもの。アフリカ住民はマラリアに対する獲得免疫等により、原虫レベルでの耐性があっても実際の治療では感受性となることが多い。

原著論文

本研究は、New England Journal of Medicine誌に2021年9月23日付で公開されました。
英文タイトル: Evidence of Artemisinin-Resistant Malaria in Africa
日本語訳: アフリカにおけるアルテミシニン耐性マラリアの証拠
著者:Betty Balikagala1), 福田直到1), 池田美恵1), Osbert T. Katuro2), 橘真一郎1), 山内祐人1), Walter Opio3), 江本桜子1), Denis A. Anywar4), 木村英作5), Nirianne M.Palacpac6), Emmanuel I. Odongo-Aginya4), Martin Ogwang3), 堀井俊宏6), 美田敏宏1)
著者所属:1)順天堂大学、2)Mildmay Uganda, Kampala, Uganda、3)St. Mary’s Hospital Lacor, Gulu, Uganda、4)Gulu University, Gulu, Uganda、5)長崎大学、6) 大阪大学
DOI: 10.1056/NEJMoa2101746
本研究は、Gulu大学(ウガンダ共和国)、大阪大学、長崎大学との共同研究として、また、科学研究費助成事業(基盤研究(B)海外学術調査JP26305015 )「マラリア原虫アルテミシニン耐性遺伝マーカーの開発:フィールドゲノミクスによる解析」(研究代表者 美田敏宏)、(基盤研究(B)JP17H04074)「薬剤耐性マラリアの出現を予測する:加速進化系による包括的実験室進化システムの開発」(研究代表者 美田敏宏)、国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B) JP18KK0231)「マラリア・エコゲノミクス:アルテミシニン耐性のグローバルな出現と拡散の解明」(研究代表者 美田敏宏)、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)医療機器開発推進研究事業「細胞チップを応用した超高感度マラリア診断装置の開発」(研究代表者 美田敏宏)、などの助成を受け実施されました。
≪関連記事≫

順天堂大学医学部・熱帯医学寄生虫病学講座 美田敏宏教授インタビュー
「マラリア治療薬の耐性原虫の出現を発見。薬剤耐性の研究を通じて、マラリア根絶一歩でも近づきたい!」

SDGs