収蔵資料WEB展示

日本医学教育歴史館に収蔵している資料をご紹介します。普段は中身を閲覧することができない資料を全ページ公開いたします。

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Materials in collection

バーチャル医学史展示について バーチャル医学史展示について

2014年4月に開館した順天堂大学・医学教育歴史館は江戸時代から現代までの日本の医学教育の歴史に関する資料を展示しております。

2023年に開催された第31回日本医学会総会の企画において、本歴史館の展示をバーチャル化し、「バーチャル医学史展示」として期間限定でウェブ公開いたしました。バーチャル医学史展示は、医療関係者だけでなく、普段は医療に接することのない多くの方にもご覧いただき、好評のうちに終了を迎えました。

この度、第31回日本医学会総会で公開した「バーチャル医学史展示」を各方面からのご協力のもと順天堂大学のウェブサイトでご覧いただけるようになりました。
この「バーチャル医学史展示」を通じて、医師を目指す学生のみならず多くの医学教育に携わる方、並びに一般の方々にも広く興味を持っていただけることを願っております。

2023年10月

『解体新書』序図

『解体新書』は本文四巻と序図一巻からなり、解剖図は序図にまとめて示されている。序図の中のほとんどの図は杉田玄白と前野良沢が実際の解剖に立ち会った際に実物とまったく同じだったことに驚嘆した『ターヘル・アナトミア』の図を秋田藩の蘭画家小田野直武が写し取ったものである。『ターヘル・アナトミア』からの図以外に、アダムとイブが現れる扉絵や手足の腱を描いた図は『ターヘル・アナトミア』ではなく、他の書籍を参考にしている。図は体表・骨・神経・感覚器官・臓器・血管などの概観をコンパクトに示し、図中には片仮名や漢数字が記号として付され、本文における説明でそれらの記号に言及して図と照らし合わせて読むことができるようになっている。

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『紀州華岡家 痬科図鑑』写本

麻沸散による麻酔を用いて乳がん摘出手術を行なったことで知られる華岡青洲は多くの弟子を育て、その外科は華岡流と言われている。華岡流外科には手術の様子を描いた図が多数残されている。『紀州華岡流瘍科図鑑』は、手術の図と皮膚や外生殖器の疾患を描いた図を集めた『奇患図』と言われる図譜の一つである。図には彩色された患部の絵の患者名と疾患名が記されている。「湯浅伊兵衛 粉瘤」と記された図には医師が描かれており、眼鏡をかけて真剣な表情で治療にあたっている華岡青洲の姿を描いている。末尾には華岡青洲の紹介や乳がん手術を説明する漢文が置かれており、これは青州の乳がん手術を表した『乳癌図譜』にある文と同一のものである。

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「平次郎解剖図」

京都の医師小石元俊は西洋医学に高い関心を持ち、杉田玄白らと交流があった。元俊が1783年に伏見で行なった平次郎という四十歳の男の遺体の解剖の記録を橘南蹊が長尺の巻物にまとめたものが『平次郎解剖図』である。図に残したのは吉村蘭州で、模写も複数作られた。展示されている資料は吉村蘭州の子 吉村孝敬が模写したものである。図には解剖が進行していく様子や各種器官が詳細に描かれ、彩色を施されている。手の筋肉の腱を釘で浮かせている図のように『解体新書』の影響も見られるが、『解体新書』とは異なる視点からの描写も多く、小石元俊が西洋解剖学の知識を持ったうえで見たい構造を意識しながら解剖を行なっていたことが窺われる。

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『施薬院解男体臓図』

京都の施薬院の三雲環善と山脇東海が主催し、小石元俊が取り仕切って1798年に行なわれた解剖の記録が『施薬院解男体蔵図』である。『平次郎解剖図』と同じく、吉村蘭州が子の吉村孝敬などの助けを得ながら、解剖が進行していく様子や各種器官が詳細に描かれ、これも彩色が施されている。さらに各図に対して小石元俊が注釈を施し、橋本宗吉がオランダ語の名称をアルファベットと片仮名で記している。『平次郎解剖図』と比較して図の数は多くなっている。また、虫垂(図では『蟲腸』と記されている)などが明瞭に描かれるなど、各構造の細かな特徴を的確に示すことが意識された図になっており、解剖の理解の深化を感じさせる。

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