05 活動報告

2023.08.02

The Organization for Human Brain Mapping(OHBM) 2023 Annual Meetingで、5年生の浅野早紀さんが研究成果を発表しました

2023年7月22日(土)-26日(水)に、 カナダ モントリオール (Palais des congrès de Montréal)で開催されたThe Organization for Human Brain Mapping(OHBM) 2023 Annual Meetingで、5年生の浅野早紀さんがポスター発表を行いました。
発表演題は「The reduction of gray matter volume correlated with insulin resistance.」です。

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2023.09.30

浅野早紀さん 海外学会発表 体験記を追加

2023年7月22日から7月26日までカナダ・モントリオールで開催された、Organization for Human Brain Mapping(OHBM)2023 Annual Meetingに行って参りました。今回は、MRIを用いてインスリン抵抗性と大脳皮質および視床下部の関係をヒトで調べた研究によりポスター発表を行いました。高齢者においてインスリン抵抗性と灰白質体積が負に相関する大脳領野が見られ、当該領域は、視床下部室傍核と同期して活動し、かつ安静時によく活動するデフォルトモードネットワークに属する、という発見についてです。また本学会はCOVID‐19パンデミックが発生して以来初の全面的な対面開催ということで、世界中から脳機能イメージング関連の研究者約3000人が一堂に会し、盛況な催しとなりました。

モントリオールは、その四方を川に囲まれており川に沿った市街地の中に緑地が点在する美しい街でした。会場パレデコングレから西へ坂道を上って行きますと地名の由来でもあるモン・ロワイヤル山にたどり着きます。その道すがら、モントリオール神経学研究所を有するマギル大学を横目に見ることができます。モン・ロワイヤル山のあたりは爽やかな高原気候であり、時折山から吹き下ろす涼しげな風に当たる度、連日猛暑が続く東京のことを思っては少しばかり得意な気分になれるのでした。一方、山を背に川岸の方角へ歩けば、市街地へ繰り出すことができます。ゴシック様式の教会があるかと思えば近代的な建物も多く、さながら大きな丸の内のようでした。クラシックとモダン、自然と文明、多様な人種、一見異質な事物を見事に共存させるモントリオールの街は、異国から来た私にとって居心地良く感じられました。

さて肝心の発表ですが、こちらは打って変わって不安がつきものでした。fMRIの専門家が集まる学会であるのに、言葉も知識もおぼつかなかったからです。一回二回と説明を重ねるうちに、ああ言えば良かったここは理解が足りなかった、と反省する点は積もり積もって行きましたが、それでも怪しい英語で何とか懸命に話していると、「インスリン抵抗性によってどのように灰白質体積が減少すると考えられるか?視床下部そのものもインスリン抵抗性の影響を受けていると考えられるか?」などと鋭い質問をいただくこともありました。このようなときは、自分が考えていたことや面白いと感じていたことが相手に伝わったのだなあという気がしてとても嬉しかったです。やはり研究のまねごとをする醍醐味は、その道の先生方と直接話せることだと思います。終わってみれば、大変有意義な時間を過ごすことができました。

ご指導くださった生理学第一講座の小西先生、小川先生、長田先生、ご支援くださった基礎研究医養成プログラム室の先生方、貴重な機会をいただき誠にありがとうございました。これからも一層励んで参ります。

~後輩の皆さまへ~

学校におりますと雑多な評価をかいくぐらなければならない場面も多いと思いますが、そういうことはあまり気にせず、心からやりたいと思うことをやってみてはいかがでしょうか。ともすると基礎研究は「それをやってなんの役に立つの?」と言われてしまうこともあるようです。なるほど日常で役立つと感じることは少ないかもしれません。でもそれはきっと、基礎研究が思考や生活のあまりにも基本的な部分を支えているために、私たちが特段気に留めないからだと思います。また本来、有用に見えるか無用に見えるかに拘らず自分がやっていて満足で愛着が持てるのならば、それで十分ではないかとも思います。もしも研究の中に自分なりの価値を見出した方がいらっしゃいましたら、ぜひ大いに取り組んでみてください。

~受験生の皆さまへ~

私が思う順天堂大学の好きなところは、人をその人自身として捉えようとする気風があるところです。例えばヒトを対象とした研究であっても、分子、細胞、組織、個体、集団と様々な階層のアプローチ法が存在します。いくら最先端の研究を行ってミクロの世界を覗いているからとて、目の前の人を単に分子や細胞の集まりだとみなすことは医師として必ずしも適切とは言えないでしょう。またいくらヒトに共通な法則を追っているからとて、ひとりひとり違って当然の周りの人々を単に同じとみなすことも感心できません。当たり前のように聞こえるかもしれませんが、その人をその人自身として受容し、尊重することの大切さをよく教わった気がします。ご縁があって一緒に学ぶことができれば幸いです。ところで、皆さんの大事にしていることは一体何でしょうか?