2019.10.26
2019年10月19日(土)‐23日(水)に、米国シカゴ(McCormick Place Convention Center)で開催されたNeuroscience 2019(Society for Neuroscience 49th annual meeting)で、4年生の田中貴大君がポスター発表を行い、2019 Trainee Professional Development Awardを受賞しました。
発表演題は、「Investigating the effects of condroitin sulfate on dendritic spines of pyramidal neurons」です。
私は2019年10月19日から10月23日まで開催されていました北米神経学会(Society for Neuroscience)主催のNeuroscience 2019(学会URLhttps://www.sfn.org/Meetings/Neuroscience-2019 )にて現在行っている研究である脳の糖鎖構造(神経細胞の外にある構造物)が神経細胞に与える影響について研究発表(ポスター)を行いました。ある抗体で観測可能な未知の糖鎖構造についての錐体細胞の樹状突起にあるスパインへの影響を報告し、この未知の構造物が一部の自閉症モデルマウスでは発現しないことも併せて発表させていただきました。報告が少ない糖鎖構造についての発表であったため、かなり細かい質疑もあり、自分の勉強不足を改めて認識せざるを得ない場面もありました。しかし、多くの方々からいただいた質疑により今後の方向性を確認することができ、学部生のうちにこの様な経験ができ、大変有意義でした。
北米神経学会主催のNeuroscience 2019は第49回目の年次総会であり、今回も例年同様5日間の期間で世界中から約30000人の脳神経学者が参加しました。北米最大の会議場(東京ドーム約5個分)であるMcCormick Place Convention Centerで行われ、市内の主要宿泊施設には会場への無料シャトルバスが20、30分に1本走っていました。会場はシカゴの中心地に近かったため、合間に少し観光もすることができました。
今回の参加では北米神経学会より若手研究者に贈られるTrainee Professional Development Awardを受賞することができました。この賞は学会での発表を希望している世界中の若手研究者を対象に研究テーマと研究活動を基に選考が行われ、数千人の応募の中から毎年100名程度が選ばれます。私を含め、日本からは3名の受賞者がおられました。受賞しますと、学会参加に必要な費用(旅費、宿泊費、食事代)がすべて賄える額の副賞が頂け、学会では通常の発表に加え、受賞者のみのポスターセッションでの発表と様々なキャリアワークショップへの参加が可能となります。受賞者ポスターセッションでは海外の同世代の研究者とお互いの研究テーマについて議論することができ、刺激的でした。ワークショップでは、アメリカでの研究費の申請方法や研究者としての人生設計の考え方などを学ぶことができ、貴重な体験をすることができました。
今回は初めての学会発表でありましたが、諸般の都合で単身シカゴへ行きました。行きの飛行機では不安を押し殺しながら発表の手順を確認していたことは今でも忘れません。準備や発表でも至らなかった部分は多くありましたが、苦い思い出も含めて海外の学会へ参加できたことは自分にとって大きな転機でした。自分の研究テーマの理解も深まりましたし、不足している部分についても認識することができました。日々の研究ではよりゴール(学会発表や論文)を意識するようになり、率先して自分の研究テーマを発信するように心掛けるようになりました。海外での学術交流を経験することにより基礎研究の大きな可能性を感じることができ、基礎研究に携わる医師になろうと強く思うきっかけとなりました。
最後に、大きな学会で発表でき、大変名誉ある賞を受賞することもできたのは大学の充実したサポート体制のお陰であることを明記したいと思います。また、臨床実習中に本学会の参加を許可していただいた、脳神経内科主任教授の服部信孝先生には厚くお礼を申し上げます。諸先生方のきめ細かいご指導に感謝しつつ、今後の研究活動も一層精進してまいりたいと思います。
基礎研究とは医学部の中では中々脚光の浴びない、地味な分野です。しかしながら、学外(特に海外)の世界を早くから体験できる活動でもあります。イメージとは裏腹に、研究活動は発信する機会も多く、ちょっと普通とは違った学生生活を送ることができます。また、幸いなことに本学には日本有数の研究設備や指導体制があります。これを活用し、充実した学生生活を送りながら、将来のライフワークを探しに、研究を学部生のうちに始めませんか?
順天堂大学を進学先の候補として考えてくれてありがとうございます。この大学は日本一と言っていいほど医師を育てることが得意な大学です。でも、治療法を覚え、それを実行するだけが医師の仕事でしょうか?より多くの患者さんの回復を手助けするには、まだ分かっていない病気を解明し、それに効く治療を探し出すのも医師の大事な仕事です。それを実行するのが基礎医学研究であり、活躍できるフィールドは世界中です。日本で臨床医をしながら、海外へ自分の研究を発信するのが研究医であり、この魅力的なキャリアのスタートとして順天堂で基礎研究をやりませんか?