どう、対処?
(1) 乾燥肌を悪化させないために
かゆみの原因で最も多いのが、乾燥によるものです。生まれて間もない頃の赤ちゃんは、お母さんの女性ホルモンの影響で皮脂の分泌が活発ですが、生後4か月を過ぎた頃から皮脂の分泌量が減少し、大人以上に乾燥しやすい状態になります。中高年においても皮脂の分泌量が減少することで、肌の保湿性が低下します。いわゆる「乾燥肌」になりやすいときには、日常のスキンケアによって予防することが大切です。
一般的に皮脂が少ない部位ほど乾燥しやすいです。例えば「すね(脛)がかさつく」、「目元や口元がかさつく」といったサインが出たら乾燥している証拠です。
また、日常生活で最も注意したいのは、「入浴時」です。例えば、熱いお湯につかったり、熱いお湯のシャワーを浴びたりすると、肌から皮脂が奪われ、乾燥しやすくなります。
さらに、肌を洗うときに、ナイロンタオルなどにせっけんを付けて、ゴシゴシこすってしまうと、せっけんの成分が皮脂を奪うだけでなく、こすることで肌にダメージを与えてしまいます。お風呂上がりに、バスタオルでゴシゴシと拭くのも良くありません。入浴後には、急速に水分が蒸発することが知られています。お風呂から出たら出来るだけ早くタオルで拭き、保湿剤を塗ることが大切です。
乾燥肌のかゆみには、何はともあれ保湿剤 !
乾燥肌のかゆみ対策には、保湿剤を塗って皮膚の乾燥を防ぐことが基本です。保湿剤を塗ると、皮膚の表面に人工的な膜がつくられ、皮膚から逃げる水分を防ぐことで皮膚に潤いを与えます。
同時に、皮膚のバリア機能を修復し、角層まで伸びたC-線維の過敏な状態を改善します。特に冬季は、乾燥しやすい「すね」や「腰」などにかゆみが起こりやすく、乾燥しやすい場所を中心に保湿剤を塗ることが大切です。
保湿剤は、病院で処方してもらうこともできますし、ドラッグストアなどで市販もされています。市販品の場合は、尿素、セラミド、ヘパリンなどが配合されたものを選ぶと良いでしょう。
保湿剤の選び方
保湿剤にはたくさん種類があります。主な保湿剤とその長所・短所を下記の表にまとめました。具体的な選択については、皮膚科の医師の指示を受けましょう。
市販のものでも、自分にとって使用感の良いものであれば構いません。主治医にはどのような保湿剤を使用しているかを知らせてください。
保湿剤には、軟膏のほかにクリームやローションなどもあります。夏に保湿軟膏を塗るとベタついて気持ち悪い感じがする場合があります。クリームやローションはベタつきが少なく、塗りやすくなっていますので、季節や自分の好みに合わせてそれらを試してみるとよいでしょう。何はともあれ、継続して皮膚を保湿することが大切です。
保湿外用薬 | 長 所 | 短 所 |
---|---|---|
油脂性軟膏 (白色ワセリン、プロペト、サンホワイト、 プラスチベス、亜鉛華単軟膏、親水軟膏、 アズノール軟膏など) |
安価 刺激感がほとんどない |
ベタつく使用感が好まれない場合がある |
尿素クリーム、ローション (ウレパール、ケラチナミン、パスタロンなど) |
保湿効果が高い ベタつきが少ない |
皮膚炎の部位に塗ると刺激感が生じる場合がある |
ヘパリン類似物質 (ヒルドイド、ヒルドイドソフト、 ヒルドイドクリーム、ヒルドイドローション) |
保湿効果が高い ベタつきが少ない 塗りのばしやすい |
種類によりわずかなにおいがある |
セラミド (キュレル、AKマイルドクリームなど) |
角質細胞間脂質で、皮膚本来の保湿機能を担っている物質 | 高価 医師からの処方ができない |
その他 (ユベラ軟膏、ザーネ軟膏、オリーブ油など) |
比較的ベタつきが少ない | 製剤によって異なる |
保湿剤の塗り方
保湿剤は、乾燥した部位など広い範囲は手のひらで、湿疹のある部位など狭い範囲は指先で、薄く伸ばすように塗りましょう。できるだけ皮膚のしわに沿そって薬を塗りのばしてください。
- 保湿剤は、多すぎても、少なすぎてもいけません。
- 肌がしっとりするくらいが適量です。
- 皮膚にすり込むと、その刺激でかゆみが増すことがあるため、すり込む塗り方は止めましょう。
- 基本は、お風呂上りに全身に保湿剤を塗りましょう。入浴後、体がまだ湿っているうちに保湿剤を塗ると、保湿剤が体の表面の水分を閉じ込めるので、最も効果的に保湿できます。
- 1日1回は必ず保湿剤を塗りましょう。
(2) 乾燥肌が悪化した場合
乾燥肌が悪化してかゆみがひどくなると、皮脂欠乏性湿疹などができることがあります。湿疹ができた場合には、炎症を抑えるためにステロイド外用剤を使います。
ステロイド外用剤は、同じ部位に長期間使用し続けると副作用として、「毛細血管が拡張する」、「皮膚がうすくなる」などがあらわれることがあります。はじめに十分な強さと量のステロイド外用剤を使って、短期間で炎症をしっかりと抑えることが大切です。
使用するステロイドの強さ、塗り方、塗り場所とその期間など、医師の指示をきちんと守りましょう。
ステロイド外用剤やプロトピック軟膏は、皮膚炎のあるところを中心に塗ります。皮膚炎が無いからといってまったく外用薬を塗ることを止めてしまうと、どうしても皮膚は乾燥しがちになり、さまざまな刺激に敏感に反応してすぐに皮膚炎を再発してしまいます。一時的に皮膚炎がおさまっていても、皮膚炎を起こしやすい体質そのものはなかなか変わりません。皮膚炎が悪化してきたら、かゆみが強くなる前に迷わずステロイド外用剤またはプロトピック軟膏を塗って、皮膚炎を抑えましょう。そうすればたくさんのステロイド外用薬を使わずにすみ、結果として副作用も心配せずに済みます。また、湿疹のあるところに保湿剤を使うと、患部が刺激されて症状が悪化することがありますので、注意してください。
(3) 乾燥肌の対策だけでは治らないかゆみに
乾燥肌の対策だけでかゆみが治らない場合は、その他の原因でかゆみが起きている可能性があります。そのような場合には、医師の診察を受け、指示に従うことが大切です。
例えば、透析患者さんのかゆみは乾燥肌対策だけでは良くならない時があり、そのような場合は、他の原因も関係してかゆみが起きていると考えられます。透析方法を工夫することでかゆみが改善することもありますし、かゆみを起こすベータエンドルフィン量とかゆみを抑えるダイノルフィン量のバランスに問題がある可能性もあります。ダイノルフィンとよく似た働きをする内服薬を試してみるのもひとつの方法です。
ここで紹介した治療法は、いずれも医師の診察が必要です。患者さんによって適切なかゆみの治療法は異なるので、必ず主治医の指示に従ってください。
(4) 日常生活のかゆみ対策
かゆみはつらいよ!
乾燥肌のかゆみを軽減するための、普段からできる対策を紹介します。
保湿は忘れずに行う
肌が乾燥するとかゆみを引き起こすため、皮膚の保湿を行うことは乾燥肌のかゆみ対策には欠かせません。自分自身の肌にあった保湿剤を選び、適切な保湿ケアを毎日行うようにしましょう。また、お風呂上りには皮膚の表面からどんどん水分が蒸発します。おふろから上がったら数分以内に保湿剤を塗りましょう。肌の保湿をしっかりと!
熱い湯や長湯は避けましょう
熱い湯や長湯では皮脂が溶け出してしまいます。適度な皮脂は肌の潤いに必要であるので、お風呂の湯の温度はぬるめに、長湯は避けましょう。
お風呂で体を洗うときはゴシゴシこすらない
入浴中、ナイロンタオルなどでゴシゴシ体を洗うのは好ましくありません。手で、やさしく洗うようにしましょう。シャワーだけでも汚れは十分にとれます。また、石けんやボディーシャンプーは、使いすぎると皮膚の膜となる皮脂を取り過ぎるおそれがあります。石けんなどの種類を選ぶこと、また使用するときは適切な量を使うように注意しましょう。
直接肌に触れる衣服は肌にやさしい素材を選ぶ
肌に直接触れる下着などの衣類は、ウールやナイロンなどの肌に刺激になるものは避け、綿や絹などの肌にやさしい素材を選ぶことをお勧めします。
汗をかいたら早めに流し去る
汗にはかゆみを起こす物質が含まれています。また、汗にほこりなどがつくと刺激となってかゆみを起こすので、早めにシャワーで洗い流しましょう。
保温の電気製品を使用するときは注意が必要
直接肌に触れる電気毛布などの電気製品のなかには、肌の乾燥を促してしまうものもありますので、肌を乾燥させないか注意して使用することが必要です。
乾燥する季節は室内を加湿し、乾燥を防ぐ
加湿器を使用したり、濡れタオル、洗濯ものを室内に干したりするなどして、室内の加湿を行うと良いでしょう。湿度計を見て、55~65% 程度の湿度を保つのが良いと考えられています。冬はもともと湿度が低いうえに、暖房でさらに室内が乾燥しがちになるので、常に加湿を意識するとよいでしょう。このように、室内の乾燥対策も欠かせません。
辛い刺激物やアルコール類の摂取を控える
香辛料の入った料理やアルコール類、カフェインが多く含まれる飲料などの刺激物は、かゆみを引き起こすことがあります。刺激物の影響は個人差がありますが、摂取するときは注意しながら、自分に見合った摂り方をするとよいでしょう。また、食事は栄養バランスよく、偏食にならないようにしましょう。
ストレスをためない
受験や仕事などで生じた心理的ストレスはかゆみを増す原因になることがあります。自分なりのストレス解消法を見つけ、できるだけストレスをためないようにしましょう。ストレスはステロイドホルモンの分泌を高め、肌の代謝バランスを悪化させます。睡眠不足も体にとっては大きなストレスになります。
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