医療技術や生活環境の向上の恩恵によってもたらされた長寿社会は、老化と共に発症する神経変性疾患にかかる人の割合をむしろ増やしています。老人性神経変性疾患には、記憶が障害されるアルツハイマー病、運動機能に障害が現れるパーキンソン病が主なものとして挙げられます。これらの疾患は、特定の神経集団が老化と共に顕著に変性していくことによって起こることが明らかになっていますが、神経変性がおこる原因の解明は大きく遅れています。私たちはアルツハイマー病に次いで罹患率の高いパーキンソン病の研究を中心に、神経変性がおこる分子メカニズムを明らかにすることを目標としています。
パーキンソン病は、運動症状がでる約20年前から進行していることが分かってきました。運動症状がでるころには、70%以上のドーパミン神経が変性してしまっており、効果的な治療ができません。効果的な治療を可能とするためは、早期発見が重要です。そのためには、なぜドーパミン神経が変性するのか?というメカニズムの理解が重要です。本講座は、このメカニズムの解明に取り組んでいます。